由希子さん:そうなんですか? 確かに、あの淡いピンクのワンピースは上品なのに、変な危機感を覚えるんですよ……。
しぎはら:そう、危機感ね。なぜなら、あのワンピースは身体につかず離れずで、女性ならではのボディーラインを引き立たせているから。だから色っぽくてセクシーよね。こういうワンピースは、男の人も「帰したくない」って思うわよ。他の人に取られてしまうんじゃないかって相手も危機感を抱くかも。
それに対して白いレースは相手の親御さんに対しても受けがいい。清純で性格がよくていい子に見えるわよね。
由希子さん:やっぱり白いレースは強いです……。自分では絶対に選ばないと思うし、せっかくなので欲しいと思っています。
しぎはら:だから、時と場合で使い分ければいいのよ。婚活写真は鮮やかなピンクオレンジの洋服で相手の視線を集めて、これぞという人と白ワンピでデートに行く。いわゆる勝負ワンピね。そして「答えを出して!」っていう時にこの淡いピンク色のワンピを着る。そういうふうに、意思や願いを服に込めることもできるんです。
由希子さん:なるほど。普段黒とかネイビーばかりを着ていて、こういう色を選ぼうと思ったこともなかったので、すごく新鮮です。
しぎはら:今回選んだ色は、由希子さんが自分ではムリと思っていた色ばかりだったでしょ? 実は普段手に取らない色だからこそ、由希子さん自身が気づかなかった自分に出会えたの。服は本当に大きな力を持っている。だからこれからは、今までムリだと思っていた服にもどんどん挑戦してほしいの。もっともっと素敵なあなたに出会えると思うわ。
由希子さん:そういうことなんですね。今日しぎはらさんに薦められたワンピースを着て、知らなかった自分と出会えた感じがします。自分のなかにたくさんの発見があって、勇気が湧いてきました。どれも華やかだけど上品さもあって。自分が目指したいと思ったスタイルが現実になったコーディネートでした。
■1年後、由希子さんのモノローグ
あの日は、しぎはらさんやお店の方から一生分の「かわいい!」という言葉をもらった、ちょっと照れくさいけど、と~っても新鮮な一日でした。あの時の体験を終えてみて、最初から自分にはムリって決めつけなくてもいいのかな、もっと早くこういう服を選んでいてもよかったのかな、今までもったいないことしてたなって思いました。
白いレースのワンピースを最初にしぎはらさんから差し出された時、「あんな女の子チックなやつ、やっぱり私には似合わないんじゃないか」って不安でした。それこそ「松下奈緒さんみたいな美人が着る服でしょ」って。自分に自信がないから、これまでは何もかもが疑心暗鬼で。ちょっと卑屈になっているところがあった……。試着したら販売員のお姉さんは「似合いますよ」って言うだろうけど、そんなことホントに思ってるの? って、きっと疑ったはず。
でも、実際に着てみたら違いました。私にも着こなせるんだって知って、嬉しかったです。
それと、あの日までの自分と今の自分、どっちが本当の自分だったんだろうって考えてしまいました。どっちも本当の自分ですが、断然今の自分のほうがいいです。
あの後、早速お見合い写真をオレンジピンクのワンピースのものに替えたら、デートの申し込み件数がウソみたいに増えました。でも確かにインターネットにあがっている私の写真、オレンジピンクが目立っているんです。どうしてこんな簡単なことに今まで気づかなかったんだろう。効果も実感したので、その後の買い物では、二の腕が出るノースリーブも華やかな色も思い切って選ぶようになりました。
コーディネートを変えたら、それまでより余裕をもって男性と話せるようになりました。なぜか、この人いいかも、と思える男性も増えました。一番びっくりしたのが、同僚から合コンやいろんなパーティーに誘われるようになったことです。やっぱり同性でも、地味な人より華やかな人を連れていきたいって思うものなんですね。なんか、私もそっち側の人になったのかもって思うと、嬉しいような照れくさいような。自分が嫉妬していた華やかな子たちのことを、やっと見直すことができたんです。それからは必然的に、出会いの機会がすごく増えて。