国立社会保障人口問題研究所が2017年5月に発表した最新データによれば、2008年から始まった人口減少は2020年代には620万人、30年代には820万人、40年代には900万人と加速する。北海道の人口をはるかに越える人口減少が10年ごとに起こると日本はどうなるのだろうか?
「単に経済の問題ではなく、日本は急速に縮小し社会のあらゆる仕組みが機能不全に陥るだろう」
そう警鐘を鳴らすのは、『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新書)の著者である、毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)氏だ。人口減少が及ぼす社会への影響、さらには高齢化が進むにつれ深刻さを増していく介護問題について、問題点の整理と解決策を毛受氏が寄稿してくれた。
* * *
著者がよく知る広島県安芸高田市。どこにでもある中山間地域の人口3万人の町である。図を見てほしい。2035年には安芸高田市の人口は最も多い世代が80歳以上となる。これで社会は維持できるのだろうか?
安芸高田市は特異な例ではない。むしろ、日本のほとんどの地方都市は同様の人口構成になるだろう。
すでに日本の縮小は始まっている。文科省の調査では2002年度から2013年度に公立の小中高校の廃校の数は全国で5801校にも上る。毎年500校以上の学校が日本から消失しているのだ。一方、80歳以上の人口は2015年についに1000万人の大台を突破。2030年には1571万人にまで増加すると予測されている。
生産年齢人口(15~64歳)の減少は、総人口の減少の10年以上前から始まっている。通勤や通学で交通機関を利用するこの世代の減少は交通網の縮小となってすでに大きな影響が出ている。
2000年から2013年までに鉄道網は35路線、674キロが廃止。バス路線にいたっては2006年度から2011年度の間に1万1160キロ、なんと年平均2000キロ以上が廃止となっている。岩手県盛岡から福岡県の門司まで東北本線、東海道本線、山陽本線を乗り継いだとしても1700キロにすぎない。バス路線の廃止のすさまじさが実感できるのではないか。