6月5日に開幕する第66回全日本大学野球選手権大会。文字通り大学野球の日本一を決める大会であり、全国の26連盟を勝ち抜いた27チームが出場する(九州地区大学野球連盟のみ北部、南部の2チームが出場)。
高校野球の甲子園大会に比べると一般的な知名度や注目度は高くないものの、今までも後にプロで活躍する選手の多くがこの大会でプレーしている。今シーズン7試合連続二桁奪三振の日本記録を樹立した則本昂大(三重中京大→楽天)は2012年の大会で松葉貴大(大阪体育大→オリックス)と初戦で投げ合い延長10回の末1対2で敗れたものの、参考記録ながら20奪三振の大会記録を樹立し特別賞を受賞している。
また、現在ブレイク中の茂木栄五郎(早稲田大→楽天)も一昨年のこの大会で6割を超える打率を残し、チームを優勝に導くとともに自身もMVPに輝いた経歴を持っている。昨年は中京学院大(東海地区)が強豪を次々と破り初出場初優勝を飾ったが、攻守の中心だった吉川尚輝(巨人ドラフト1位)の評価もこの時の活躍によって上がった部分は大きかったはずである。
今年出場する選手を見ると、現時点でドラフト1位確実と言われるような目玉は不在だが、プロでも通用する特長を持った選手は決して少なくない。投手では最速150kmを超えるスピードが魅力の草場亮太(4年・九州産業大)と近藤弘樹(4年・岡山商科大)の二人の注目度が高い。草場は全体的に体の開きの早いフォームで、右打者の内角を攻めきれないのは不安要素だが、柔らかい腕の振りは魅力だ。体型は違うが、少し肘を下げて沈み込まずに速いボールを投げるという意味ではスアレス(ソフトバンク)にイメージが近いだろう。
一方の近藤は永川勝浩(広島)の若い頃と印象が重なる。テイクバックで右肩が大きく下がり、190cmの長身を持て余している部分はあるが、意外に器用で変化球の制球は悪くない。ともに完成度は低く即戦力としては評価しづらいが、スケールは大きくプロが好むタイプと言えるだろう。逆に抜群のまとまりが光るのが常総学院時代に甲子園でも好投を見せた飯田晴海(4年・東洋大)だ。大学では故障に苦しみ主戦となったのは昨年秋からだが、この春はフル回転でチームを優勝に導いた。巨人でフル回転していた頃の久保裕也(楽天)を彷彿とさせる完成度の高いフォームで、両サイドを丁寧に突く制球力は素晴らしい。多彩な変化球も操り、試合を作る能力の高さはピカイチだ。リリーフタイプで面白いのが宮川哲(4年・上武大)だ。黒木優太(オリックス)をせわしなくしたようなフォームで、短いイニングでは打者を圧倒するピッチングを見せる。中継ぎの層を厚くしたい球団にはぴったりの投手と言えるだろう。