タチレク空港。発着便はすべてプロペラ機だ
タチレク空港。発着便はすべてプロペラ機だ
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 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第26回はミャンマーの空港への足について。

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 途上国になればなるほど、空港と市内を結ぶバスは少なくなる。飛行機を利用するのは、富裕層であって、会社や自分の車が足になる。バスなど運行させても、乗る人もいないのだ。

 これまでミャンマーのいくつかの空港を使ってきた。タチレク、ラーショー、ミッチーナ、マンダレー、ヤンゴン。この連載で紹介した空港もある。

 どの空港も市内を結ぶバスはない。唯一、マンダレーだけは乗り合いバンが走っている。タクシー会社の運営で片道500円弱といったところだ。マンダレー空港は市内からかなり遠いところにあるためだろうか。

 ほかの空港は市内からそう遠くない。タチレク、ラーショー、ミッチーナといった地方の小さな空港へは、いつもバイクタクシーで向かうことにしている。特別に安いわけではないが、とにかく台数が多いからすぐに乗ることができる。

 先日、タイのメーサイから陸路でミャンマーのタチレクに入った。タチレク空港からラーショーに飛行機で向かうことにしていた。タイ国境の橋を渡り、ミャンマーの入国審査をすませた先に、20~30台ほどのバイクタクシーが待っていた。150円ほどでタチレク空港まで行くという。バイクは街なかをとことこと抜け、木に囲まれた空港に着いた。

 バイクタクシーで空港に向かう──。気楽でいい。

 飛行機はラーショー空港に着いた。タクシー運転手が待ち構えていた。空港内に入る利権を得ているのだろう。運賃は10万チャットだといった。1000円近い。少し先に空港に入るゲートがあった。そこに男たちが待っていた。行ってみると、空港の敷地に入ることができないバイクタクシーの運転手たちだった。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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