■医学部進学に特化せず、「最強」になった東海

 医学部受験の雄、東海高校を訪ねた。

 名古屋駅から最も近いルートで行けば、約10分で最寄り駅に到着。その駅からは、閑静な住宅地のなかを10分ほど歩いたところに、同校は立つ。1888(明治21)年に浄土宗学愛知支校として創立した伝統校だ。

 学習指導部長の杉浦一輝教諭に教育方針を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「宗教の授業で命、脳死と移植医療などをテーマにすることはありますが、実は、医学部受験のための特別な指導は行っていません。医学部コースもありません。小論文や面接の指導も行っていますが、医学部志望者に限りません」

 実際、卒業生には、政治家の海部俊樹元首相、作家の大沢在昌氏、スタジオジブリ代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫氏、人気予備校講師の林修氏など多士済々な面々がそろう。むしろ、医師以外のさまざまな職業に関心を持たせるための取り組みを行っているといい、愛知県などの後援のもと、主に生徒実行委員が運営する市民公開講座「サタデープログラム」を02年に開始。16年には、49講座を開講するにまで成長した。

「このサタデープログラムでは生徒が自分たちで講師を選び、依頼し、打ち合わせをします。自主的に取り組む姿勢を育むことが、受験勉強に役立っているのかもしれません。これらの取り組みが進路を考えるいい機会になっていると思いますが、医師のご子息が多いことから、最終的には医学部を目指す生徒が多いです」(杉浦教諭)

 生徒が受験する国公立大医学部は名古屋大、名古屋市立大、岐阜大、三重大、浜松医科大、滋賀医科大などが多いという。なかでも最も多いのが名古屋大で、16年度の合格者数は23人。実に、学部定員の約4分の1を占めている。

 教務部長の西形久司教諭が言う。

「名古屋大学附属病院などの病院に行くと、教え子に会うことがよくあります。医師として活躍している姿をみるとうれしいですね」

■他者を思いやる心を育む、南山の理念

 名古屋市にある南山高校は男子部と女子部に分かれている。女子部は、1948(昭和23)年創設のカトリック系のミッションスクールだ。

「本校も医師の子どもが多いと思います。2000年に文系より理系の生徒のほうが多くなり、現在は200人中120~140人が理系。医学部を目指す生徒も多くなりました。講師を招いた『進路講演会』や卒業生による進路説明会などのキャリア教育、生徒の依頼に応えての模擬面接や小論文指導は行いますが、医学部受験に特化したクラスや指導はありません」(濱口吉宏教頭)

 30年ぐらい前までは200人中60人ぐらいが南山大に進学していたが、現在は国公立大志向が強いという。

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