「地元志向が強いため、自宅から通える名古屋大、名古屋市立大、三重大、岐阜大、浜松医科大を受験する生徒が多い。私立の愛知医科大、藤田保健衛生大を受験するのは、医師の子どもが多いように思います」(同)
16年度は、医学部に81人が合格し、45人が進学した。このうち29人が京大、名古屋大などの国公立大に進学。私立大の進学者は愛知医科大5人、藤田保健衛生大8人など計16人だ。
同校では、キリスト教の精神に基づき、高1と高2の夏休みに保育施設、障害者施設、児童養護施設などでボランティアを体験する。また、器楽部は病院を慰問し、クリスマスコンサートを行う。濱口教頭が言う。
「毎日朝礼があり、週に1回、宗教の授業を行います。クリスマス聖式、中2で実施する2泊3日の修養会、ボランティア体験などを通じて、他者を思いやる心を育みます」
■医学部受験対策に、滝は予備校と連携
県北部の江南市にある滝高校は、名古屋駅から電車で約20分で最寄り駅に着く。そこからは徒歩20分ほど。名古屋から比較的近いこともあり、東海や南山女子部と併願する生徒が多い。岐阜県にも近いため、県をまたいで通う生徒もいるという。
同校には医学部を目指す生徒のためのコースがあり、医学部受験のための小論文指導もある。戸田誠教頭はこう話す。
「保護者が医師という生徒が多く、一学年約350人のうち80人ぐらいが医学部を志望します。相変わらず医学部人気は高く、近年は『医学部に強い高校』というイメージが定着してきたのか、入学時から医学部志望だという生徒が増えています」
高3から、理系は医・歯・薬系志望者コースと、理・工・農系志望者コースに分かれる。
「医・歯・薬系志望者コースでは、ホームルームの時間に医療問題の討論をすることもあります」(戸田教頭)
医学部志望者を対象に、年に約20回ほど実施する「小論文指導」は、河合塾の講師が行う。毎年60~70人が受講し、予備校の「実力」を採り入れている。
毎年3月には、高1と高2を対象にした「合格者の講演会」を行うほか、8月下旬には卒業生の大学生による「大学進学懇談会」を開催。医学部志望の中高生と保護者が多く訪れる。
愛知県内では東海や南山、滝といった私立の中高一貫校以外にも、東大合格者数が多い県立の旭丘や岡崎などで、近年、医学部志向が強まっている。愛知県は、着実に「医学部天下」への道を歩んでいるのだ。(文/庄村敦子)
※アエラムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる』より