
「(追いつけることを)最後まで信じていた」
レアル・マドリーのジネディーヌ・ジダン監督は淡々と言ってのけている。強がりではない。その証拠に、90分のセルヒオ・ラモスの劇的な同点弾に眉ひとつ動かさなかった。
伝説的選手だった英雄ジダンは、凡人が入れない領域に踏み入っているのか。
<選手を信じ切る>
活字にすると平凡だが、求心力のあるリーダーに信じられた集団は“死中に活を求める”ことができるのだ。
現地12月3日、バルセロナ。「カンプ・ノウ」を舞台にした世紀の一戦、クラシコは世界中で7億人近い人々が視聴したと言われる。FCバルセロナも、マドリーも双方譲らずの戦いを見せた。結果は譲らず、1‐1で引き分けに終わっている。
しかし勝者の表情を浮かべていたのは、マドリー陣営だった。まず、敵地で引き分けたこと。終了間際に追いついた陶酔感もある。何より、試合を通して優位に立っていた。
前半からMFルカ・モドリッチが鬼神の如く立ち回った。パスコースを読み、遮断。ボールを握って失わず、迅速にはたき、攻撃を展開した。そのプレーは職人的で、芸術的でもあった。ポゼッションに妙のあるバルサを、モドリッチ一人で圧倒。バルサのバックラインを怯ませ、ハビエル・マスチェラーノは2度もPKの疑いのあるディフェンスをせざるを得なかった。
しかし、形成不利に見えたバルサが息を吹き返す。後半立ち上がりの53分、左FKをルイス・スアレスがヘディングで叩き込む。セットプレーから直接ヘディングでのゴールは、バルサでは珍しい。この後、アンドレス・イニエスタを投入すると、一気に試合を優位に動かす。イニエスタは、バルサ伝統の目眩くパスワークを復活させる。彼がボールを弾くだけで、リオネル・メッシ、ネイマールらが決定機を迎えている。
だがこれを決めきれず、天秤がぐらつき始める。
終盤、押し込まれたバルサは必死に耐えるも、90分にアルダ・トゥランが、マルセロに誘われるようにファウルを犯してしまう。そのFKをセルヒオ・ラモスに頭で合わせられ、追いつかれた。