錦織圭は、いつもトーナメントのドローが決まっても、次の対戦相手しか見ないという。勝ち上がった時にどこで誰と戦う可能性があるかは、考えない。自分の制御下にない事象に対しては、心を砕くこともない。だから恐らく今回のオリンピックでも、今の彼の関心は、1回戦の対戦相手にしか向いていないはずだ。
現地時間の4日にドローが決まり、その1回戦の相手は世界33位のアルベルト・ラモスに決まった。錦織の対ラモスの成績は3勝1敗。ただし最後の対戦から、既に3年以上の歳月が経っている(ちなみに最後の対戦ではラモスが勝利)。その頃から両者ともに、ランキングも立場も大きく変わった。過去の戦績はあまり参考にはならないだろう。
錦織にとって不気味なのは、ラモスがこの1年で急成長を見せている点だ。今年5月の全仏オープンでは、当時世界9位のミロシュ・ラオニッチを破りベスト8に進出。さらに7月のスウェーデンオープンでは、28歳にして初のツアー優勝の栄冠にも輝いた。これら2つの大会がクレー(土)であることからも分かるように、ラモスはクレーを得意とし、粘り強く堅実なストロークが持ち味の選手だ。
だからと言ってクレー以外が苦手かと言えばそうでもなく、昨年の10月には比較的球足が速いと言われる上海マスターズで、ロジャー・フェデラーを破る大金星をもぎ取っている。この試合でのラモスは、サウスポーの特性を生かしたサーブで相手を崩し、そこから優勢に展開するストローク戦で効率よく自身のサービスゲームをキープ。そして数少ないチャンスでは堅牢な守備で相手のミスを誘い、総ポイント数では下回りながらも勝利をつかんだ。