花形階級での復権が望める一方で、これまで日本が鬼門としてきた階級でも、今回はメダル獲得の気配がある。81㎏級の永瀬貴規(旭化成)の存在だ。81㎏級は外国人選手の層が厚いため、これまで日本は苦戦を強いられてきた。そんな中で、永瀬は学生時代から同階級の世界大会で数々の金メダルを獲得。昨年にはついに世界選手権金メダリストにのぼりつめた。
4月に行われた全日本選抜体重別選手権でも圧倒的な強さで優勝。順調に仕上がっていることをうかがわせた。81㎏級=日本の鬼門という構図を、リオ五輪では彼が払しょくしてくれることだろう。
また、これまでの実績や経験からも期待が高いのは66㎏級の海老沼匡(パーク24)だ。世界選手権3連覇という圧倒的な成績に加え、前回のロンドン五輪にも出場、銅メダルを獲得した。世界王者という実績から金メダルを嘱望されていた海老沼にとって、ロンドン五輪は悔しい結果だったが、それだけに今回のリオ五輪にかける思いは強いはずだ。
ただ、海老沼に関して気になるのが、4月に行われた代表選考の最後の大会、体重別選手権で阿部一二三(日体大)に惨敗したことだ。五輪選考は複数の大会の結果やこれまでの実績を勘案して行われるため、結果的に海老沼は代表に内定したが、この敗戦をうけ、彼の印象が微妙なものになった部分があるのは確かだ。しかしながら、今回の五輪代表選手の中で、五輪経験も含めその経験値は圧倒的に高い。五輪では柔道は階級が軽いものから行われるため、60㎏級に次いで行われる66㎏級で海老沼が活躍すれば、後に続く日本選手を盛り上げることにもなる。男子柔道の幸先の良いスタートのためにも、海老沼の活躍には期待したいところだ。
今回は5選手をピックアップしたが、実のところ男子柔道は全階級でのメダル獲得が期待される。ロンドンの雪辱に燃えた男子柔道の面々が、日本にメダルラッシュをもたらす可能性も十分にある。リオ五輪ではぜひとも、お家芸の復権を見届けたい。(文・横田泉)