そんな中、今回100kg級でメダル奪還に挑むのが羽賀龍之介(旭化成)だ。羽賀は高校時代から注目されてきた選手で、東海大相模高時代、当時1年生ながら、勝ち抜き団体戦の金鷲旗大会で史上初の20人抜きの大記録を打ち立てた。しかしながら大学に進んでからは故障に泣き、思うように実力を発揮できない日々が続いていた。一方、その頃は男子柔道の100㎏級自体も低迷しており、2014年には同階級の世界選手権派遣を初めて見送るという事態にまで陥っていた。

 そうした状況であったから、昨年から羽賀が見せた復調ぶりは、まさに100kg級にとっての光明であった。2月のグランプリ・デュッセルドルフ大会で金メダルを獲得すると、8月の世界選手権では同大会初の金メダルを獲得した。昨年末のグランドスラム・東京でも金メダルを獲得し、完全な復調をアピール。4月の最終選考会はケガで欠場したが、6月の合宿では順調な回復ぶりをみせており、得意の内股を武器に金メダルを目指す。

 100kg超級でメダルの期待がかかるのは、原沢久喜(JRA)だ。重量級はこれまで、世界選手権で2度、銀メダルを獲得している七戸龍(九州電力)がけん引してきたが、原沢は五輪選考対象の大会で着実に実績を重ね、今回リオ五輪の切符を手にした。代表入りを決めた全日本選手権でこそ3位に終わっているが、そこに至るまでには徐々に調子を上げてきた感があり、リオ五輪でピークを迎える可能性は十分にある。

 そんな原沢が超えなければならない最大の壁が、フランスの絶対王者テディ・リネールだ。ロンドン五輪金メダリストにして、世界選手権7連覇という圧倒的な実績を誇るリネールと、原沢はまだ対戦したことがない。しかし、井上康生を監督に据えてからの男子柔道は、選手との対話を重視し、今まで以上にデータを活用するスタイルに変化を遂げた。リネールの研究にも余念はなく、6月の合宿では井上監督直々に寝技の指導を受けた。五輪で初対戦の相手と戦う怖さは恐らくリネールも同じだろう。好調の波とリネール対策の後押しを受けて、原沢が金メダル奪取に挑む。

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