こうした相談にもキャリア支援のアセスメントツールを活用することがあります。測定の結果、生活スタイル重視の傾向が強ければ、待遇面を第一に転職先を探す、独立志向や起業家的な資質がありそうなら開業も視野に入れる、といった具合です。やりがいや勤務先のブランド力、人脈など、挙げれば希望はキリがなく、しかし漠然としているもの。求める条件と優先順位を明確化することが必要です。
【医局を辞めたいのだが… 大学病院30代後半 男性Gさん】
――医局の教授にはよくしていただき、学位も取らせていただいたが、医局で上を目指す生き方は好まないのでそろそろ医局を離れようと思っています。その際どのようなスケジュール、どのような理由で退局をすればいいでしょうか。
医局に属する医師は一時より増えているとはいえ、不足は続いています。教授としても配下の医局員は多いに越したことはなく、なるべく辞めさせたくありません。
仮に医局に不満があっても「本音」は御法度。医療界はとても狭く、関係がこじれると、その後のキャリアに影響しかねません。実家の医院を継ぐ、家族に介護が必要になったなど、何かしら外的な要因を挙げ、それとなく示唆しておくのが賢明です。医局では来期の人事を決めるために11?12月頃に教授との面談が行われますが、この時期に向け、あらかじめ示しておくのです。円満退局には計画性が必須。焦って行動してはいけません。
【結婚・出産はいつすべき? 私立大学3年生 女性Hさん】
――現在医学部3年生ですが、結婚や出産をどの時期にするか、ある程度イメージしておきたいと思います。たとえば研修中の結婚・出産は可能なのか、難しければいつ頃するのが望ましいでしょうか?
大学で6年、初期研修に2年、後期研修が3~5年。一人前になるまでに10年あまりかかる中、「結婚・出産をいつするか?」は女性医師・医学生にとって大きな問題です。現実的には、多忙を極める研修のさなかの出産・育児は困難。(1)初期研修後、後期研修に入る前にインターバルをとる (2)後期研修まで終えてから (3)もっと早く学部生のうちに、といった時期を想定する人が多いようです。
学生の間は将来への不安から「早く結婚・出産したい」と願うケースもあれば、年齢のリスクを冷静にとらえ、「早めに育児を済ませてから、医師として邁進したい」と堅実に人生計画を練っているケースも。女性教授の中にも「出産はできれば学部の間に」との助言をする方もいるようです。
【バリバリ働きたくはない 市中病院2 年目研修医 女性Iさん】
――もともと医師になった理由も希薄で、当直や緊急呼び出しをいとわない働き方はしていく自信がありません。できれば週1~2回くらいのパートで十分というのが本音なのですが……。
こうした本音を持つ女性医師は案外少なくありません。結婚・出産後に当直やオンコール(緊急呼び出し)なしの勤務を希望する人も多いですが、「週2回の非常勤」「常勤でも土日休み、当直なしの週4日」といった条件に合う病院が見つかるとは限りません。比較的ゆったり働ける健診・人間ドックの仕事なども視野に入れ、専門にこだわらずに探す必要があるでしょう。
(文・篠田麻由美)
※AERA Premium『医学部がわかる』(AERAムック)より
中村正志さん
株式会社ニューハンプシャーMC取締役・医師専任コンサルタント。大手経営コンサルティング会社を経て現職。これまで500人以上の医学生・医師のキャリア設計に携わる。医学生や研修医向けの勉強会なども主宰