シャスールは、鍋の形状が他メーカーのように底に向かってすぼまっていくテーパー形状ではなく、ほぼストレートな寸胴型で底面積が少し大きい。フタもある程度の重さがあり、密閉率もそれなりにある。バーミキュラは精密加工で密閉性の高いのがセールスポイントで、鍋底にグリルパンのような凹凸のあるリブがついているのも特徴。食材を点で支えることで過剰な熱の伝達を抑える目的だが、鍋底をきれいに混ぜにくいとの声もあり、好みが分かれるところ。
内部のホーロー仕上げにも違いがある。ストウブを除いては、どのメーカーも内部は白いつるつるの仕上げになっている(ル・クルーゼとシャスールはカラーによっては内部が黒いものもある)。これがホーローの特徴で、調理中の煮汁の様子なども見やすく、できあがった料理をそのままテーブルに出したときの見栄えもいい。
しかしストウブは内部がザラザラした独自の黒マットエマイユ加工。細かな凹凸によって油なじみがよく、食材との接点が少なくなり、焦げ付きにくいのが特徴だ。内部が白いホーロー加工は使っているうちに、あくなどによって色がくすんだりするが、黒はそうした汚れが目立ちにくい。無骨な印象を与えるが、このマット加工は実用面では非常に優れている。
フタのつまみにも製品の特徴が現れている。ストウブとバーミキュラは金属製なので、そのままオーブンに入れて加熱することもできる。一方、ル・クルーゼとシャスールは樹脂製(ル・クルーゼには金属製のつまみに変えられるオプションもある)。オーブン調理は200度までに限られるが、調理中にフタをあけるときには、樹脂製はつまみが熱くないので、そのまま持てて便利だ。
こうしてチェックしてみると、実用性を重視するなら誰にでもすすめやすいのはストウブだろう。使い勝手やメンテナンス性などを含めてバランスがいい。次いで底面リブの評価は分かれるが、密閉性の高さで無水調理に強いバーミキュラも機能面では優れる。デザイン性を重視するなら、ル・クルーゼとシャスールは甲乙つけがたいところ。サイズやカラーのバリエーションはル・クルーゼが最も豊富に用意されている。
基本的な性能に関していえば、どのブランドのものを買っても失敗はない。しいて言えば無水調理やオーブン調理で活用したいならストウブやバーミキュラだが、実用性やデザイン性など、どれを重視するかによって選択が変わってくる。はじめての鋳鉄ホーロー鍋なら、20~22センチくらいの丸形のものを選べばいいだろう。どれを選んでも、鋳鉄ホーローのもつポテンシャルの高さは、料理を楽しくし、今までよりワンランク上の仕上がりで楽しませてくれるはずだ。
(ライター・栗山琢宏)