「街の動物病院」はそのあり方を、飼い主のニーズや社会の要請にこたえ、さまざまに変えてきた。もちろん、いまもそうだ。ある分野の専門性を高める獣医師が出てきているのは、近年になって見られる変化の一つだろう。
今回の調査では「得意な診療科目」や「診療実績が目立って多い犬種や猫種」「得意な犬種や猫種」について聞いているが、それぞれ特徴的な回答をしてきた動物病院は少なくない。また、動物病院の各獣医師が所属している学会名、認定医や専門医の資格の有無なども確認している。こうした「専門性」と、「年間診療数」「年間手術数」とをあわせて見れば、一つの判断材料になるはずだ。
もちろん、資格などを持っていることと、自分のペットにとって適当な獣医師であることが、すぐにイコールでつながるわけではない。
しかし、飼っている犬種や猫種によっては特徴的に現れる疾患やけががあり、そうした方面に強い獣医師がいる動物病院を把握しておくことには、意味がある。また、予期せず重い病気やけがを負ったときに、紹介状や予約がなくてもある程度の専門的な診療が可能な動物病院があることを頭に入れておけば、選択肢が広がることも間違いない。病気やけがをこじらせてからでは、取り返しのつかない事態になる場合もあるのだ。
「近くに信頼できる『主治医』を見つけておくことが何より重要ですが、現実には診療科目の得手不得手があります。卒業後も得意分野のセミナーなどに出席して、より知見を広めている獣医師もいる。ペットが高齢化したり重い病気にかかったりしたとき、症状によっては得意な診療科目を確認して病院を選んだり、紹介してもらったりするといいでしょう」(前出の細井戸氏)
専門性の別の軸として、動物種による違いがある。特に犬猫以外の動物の場合、「診療対象動物の診療比率」を参考にして、自分のペットと同じ種類の動物を普段からある程度の割合で診ている病院を選ぶ必要があるだろう。
犬と猫とでも、動物としてずいぶんと違いがある。そのため、猫に特化した動物病院も存在する。猫の飼い主は、猫の診療比率が相対的に高い病院が存在することを知っておいてもいい。例えば、猫以外の動物は診療していない、猫専門のスタッフをそろえ、猫特有の疾患に対応できる体制も整えている動物病院などだ。