その後は超右肩上がり。17年当時は約15万部だったのが18年には20万部を超え、19年秋に30万部を突破した。2年で倍の急成長である。
「二つの雑誌には共通点があります」
こう話すのは、高齢世代のライフスタイルを長年、研究してきた「人生100年時代 未来ビジョン研究所」の阪本節郎所長だ。
「両方とも『シニア』という言葉を使っていないのです。この世代の女性が素敵でおしゃれに積極的なことに気付いている人は大勢いました。でも、誰もが彼女たちを『シニア』と捉えていました。ファッションにしても、あくまで『シニア・ファッション』だったのです」
それが、なぜダメなのか。阪本所長が続ける。
「当たり前です。50~70代の女性たちは自分たちがシニアだなんて、これっぽっちも思っていないからです。『シニア? 80代の私のお母さんのこと?』くらいのイメージ。そこへ『シニア』と呼びかけても反応するはずがありません。『素敵なあの人』と『ハルメク』は若さもある彼女たちに、自分たちの雑誌だと認識してもらえたからこそ売れているのです」
なるほど、50~70代の女性は「シニア」ではないのだ。
確かに子育てを終えたおおむね50代以上の女性たちは近年、「大人女子」と呼ばれ、そのアクティブな活動ぶりは本誌を始め一部で注目されている。阪本所長によると、彼女たちが旺盛に消費を楽しんでいることは大いに注目するべきという。
「彼女たちが最初に消費で社会にインパクトを与えたのは、03年から日本で放映された韓国恋愛ドラマ『冬のソナタ』に端を発した韓流ブームでした。今は70代になっている団塊女性が子育てを終えて自由になり始めた時期が、ちょうどそのころなんです」
その後の大人女子の消費は、彼女たちの夫の会社人生に連動していく。例えば旅行。阪本所長によると、数歳年上の夫が会社を去り始めた10年ごろから国内旅行が増え始めた。東日本大震災でいったん落ち込むものの、その後は国内だけでなく海外旅行が増えていったという。