東急プラザ渋谷5階のカフェラウンジ「Pepper PARLOR」。ロボットたちが客をもてなしてくれる=Photo by Christopher Jue /Getty Images for Tokyu Land Corporation
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宝島社が創刊した「素敵なあの人」と神下敬子編集長 (撮影/首藤由之)
宝島社が創刊した「素敵なあの人」と神下敬子編集長 (撮影/首藤由之)
資生堂の化粧品総合ブランド「プリオール」のポスター。加齢で気になる現象を「大人の七難」と名付けた。イメージキャラクターは左から宮本信子、常盤貴子、原田美枝子の3人=同社提供
資生堂の化粧品総合ブランド「プリオール」のポスター。加齢で気になる現象を「大人の七難」と名付けた。イメージキャラクターは左から宮本信子、常盤貴子、原田美枝子の3人=同社提供

 60代向けのファッション誌が完売するなど「大人女子」消費が活気づいている。若々しい彼女たちを「シニア」扱いするのはご法度。むしろバブル世代の仲間入りでより活発化の傾向といい、「大人女子市場こそがこれからの消費のカギを握る」とする専門家もいる。新型コロナウイルスで落ち込む国内消費を救うのは大人女子かもしれない。

【写真】3号連続で10万部が完売!「素敵なあの人」と編集長がこちら

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「60代から、もう一度おしゃれを楽しもう!」「60代の靴悩みすべて解決!」……

 デカデカと躍る「60代」の文字。宝島社が昨秋、月刊誌として創刊した「素敵なあの人」の表紙だ。神下敬子編集長が言う。

「文字どおり60代女性へ向けたファッション誌です。おかげさまで創刊から3号連続で10万部が完売しました。その後も好調な売れ行きです」

 何とも景気のいい話である。ネットやスマホに押されて活字雑誌は元気がないだけに、にわかには信じられない数字だ。いったい何がウケているのか?

「何と言っても、この世代へ向けたファッション誌がなかったことが大きい。日本初なんです。『やっと出たか』『待っていた』といった反応がとても多い」(神下編集長)

 こういうことだ。60代にもなると体形が崩れたりして前に着ていた服が似合わなくなったりする。さて、どういう服をどう着こなせばいいのか、と思って周りを見渡しても「教科書」がない。そこへ、「こうすれば……」というお手本を示したのだ。

「例えば、ヒールの靴はまず扱いません。足のアーチが崩れ幅広になり、外反母趾(がいはんぼし)に悩む人も多く、60代はもう細いヒールは難しいんです。でも皆さん、『ファッションと言えばヒールよね』と思っていらっしゃいます。そこで私たちは、そんなことはありませんよ、今はスニーカーやコンフォートシューズがすごくおしゃれでこんなコーディネートができますと提案するわけです」(同)

 2017年暮れに前身となるムックを出したところ、いきなり5万部を完売、以来ほぼ3カ月に1回刊行してきた。約2年間の蓄積があるためなのだろう、神下編集長によると、「素敵なあの人」は徹底的に60代に寄り添って作られている。字をできるだけ大きくする、英語は多用しない、わかりにくいカタカナ用語も少なくする……。

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