コンセプト開発に携わったブランドプロデューサーの柴田陽子さんによると、綿密な調査の結果、大人世代の居場所が作れることを確信したという。
「大人世代が大勢住む地域が周辺にあり、電車やバスで近郊からも大勢の大人世代が来ていることもわかりました。渋谷というと若者のイメージがありますが、その塊と、かつて渋谷で育ち渋谷に育てられた大人世代の塊が共存しているんです」
施設には、超高齢社会を見通した柴田さんのアイデアが詰まっている。とりわけ信託銀行や旅行代理店、終活相談コーナーなどが並ぶ5階の「シブヤライフラウンジ」は斬新だ。
「開放的でラグジュアリーな空間で、高齢世代が抱える悩みや問題を明るく前向きに相談・解決できる場所が、自然と街の動線の中にあるイメージです」(柴田さん)
飲食フロアには予想どおり、大勢の大人女子が訪れている。その一つ、茶寮「京都宇治 藤井茗縁」の店長(32)は、
「ほとんどのお客さんが50~70代の女性ですね。リピーターになってくれる人が多い印象があります。こだわりを持たれている方が多く、次に来られた時にそのこだわりに沿って接客するとすごく喜ばれました。その方からは年始にお年玉までいただきました」
全体の責任者、長尾康宏総支配人によると、年間約600万人の来場をめざす。
「確かに平日を中心に女性が多く、飲食はビックリするくらい入っています。でも、まだまだオープンを知らない人も多く、この世代らしく新聞に折り込みチラシを入れると、どっと来てくださいました。大人、大人と言い続けていますが、やり始めてさらなる可能性を感じています」
東急プラザ渋谷が成功すると、同様の施設が次々に登場していくかもしれない。
先の未来ビジョン研究所の阪本所長は、こうした相次ぐ動きに東京オリンピック後が楽しみという。
「アスリートに代表されるように、オリンピックまでは世の中の目は『若者』に集中します。しかし、それが終わっていざ消費の足元を見ると、核になるのは若者ではないことに気付くはず。そこで大人女子の動きに目が向く、そんな展開を予想しています」
いよいよ大人女子消費の花盛りが始まるのかもしれない。(本誌・首藤由之)
※週刊朝日 2020年3月27日号