もう一つの影響は上野動物園のパンダの引っ越しだ。園内ではパンダ舎の建て替えが進んでいる。現在の東園から西園に移る予定で、移転は73年以来なんと47年ぶりだ。

 新パンダ舎では、ガラス越しでなくじかに見られるエリアができる。建築面積(屋根がある部分の面積)は現在の約3倍、屋外の面積は約1.4倍に広がる。屋外ではもとの生息地の環境を再現しており、野生に比べ活動量が少なくなりがちな動物園のパンダの体を鍛える狙いもある。新パンダ舎の周りにはレッサーパンダ舎なども配置。一帯を「パンダのふるさとゾーン」とする計画で、全体の事業費は約22億円だ。

 東京都建設局が18年5月に発表した時点では、完成予定は今年3月頃。だが、実際にパンダが引っ越すのはずれ込みそうだ。工事が終わるのは4月以降になりそうで、パンダ舎が完成しても中国側のチェックを受けるまでは使用できない。コロナショックで日本と中国の往来がままならない現状では、中国側のスタッフがいつ来日できるのか見通せない。

 パンダは海外の動物園でも大人気だ。現在、日本を含め、21カ国と3地域で飼育されている。筆者はこのうち、オーストラリア以外の全ての国・地域のパンダ舎を過去に訪れたことがある。

 新型コロナウイルスの影響が深刻な欧州では3月23日時点で、パンダがいる9カ国全てで閉園。SNSでパンダの様子を伝える動きが広がっている。ドイツのベルリン動物園は、3月19日(日本時間)にツイッターとフェイスブックへ動画を投稿。昨年8月に生まれたオスの双子のうちの1頭、モンユァン(夢円、ニックネーム:ポール)に、飼育スタッフがミルクをあげるシーンが見られる。

 デンマークのコペンハーゲン動物園には、昨年4月に中国から来たオスのシンアル(星二)とメスのマオアル(毛二)がいる。3月20日に広大なパンダ舎の様子を、フェイスブックで40分ほどライブ配信した。

 トランプ大統領が国家非常事態を宣言した米国では、パンダがいる3カ所の動物園が全て休園している。アトランタ動物園には4頭いて、動画も配信している。

 このように、海外のパンダのかわいらしい姿も、ネットを通じて見ることができる。ネットで動物園名などを検索すれば、動画にアクセスできるはずだ。

 コロナショックは長引いており、出入国は世界的に制限されている。国内でも人が集まる動物園などの休園は続く。動物園が再開しパンダを見に行く場合でも、密集しないように他人との距離を取り、他者に感染させないようマスクをすることなどが求められる。

 今回はパンダに絞って紹介したが、ほかにも各地の動物園や水族館が、シロクマやカバ、ペンギンやアザラシなどの写真や動画を配信している。動物を見ることでストレスを発散し、新型コロナウイルスの危機を乗り切りたい。(文、写真/パンダジャーナリスト・中川美帆)

※週刊朝日オンライン限定記事