日本でパンダを飼育しているのは、アドベンチャーワールド、上野動物園、神戸市立王子動物園の3園。

 リーリー(力力、オス、14歳)、シンシン(真真、メス、14歳)、シャンシャン(香香、メス、2歳)の3頭がいる上野動物園は、2月29日から臨時休園している。これほど長く休むのは、2011年の東日本大震災以来だ。

 上野動物園の入場者数は、17年6月のシャンシャン誕生をきっかけに大幅に増えていた。2018年度は496万9547人で、19年度は500万人達成が期待されていた。

 シャンシャンは繁殖のため中国へ旅立つので、日本にいるのは今年末まで。残すところ10カ月弱。時間が限られているのに休園で、「パンダロス」がいつまで続くかわからない状況だ。

 ファンの声に応えるべく、上野動物園もユーチューブやツイッターで写真や動画を連日配信している。音声入りなので、シャンシャンが竹をバキバキと割る音まで聞こえる。

 3月19日に配信された動画は、シャンシャンの声が入った特別バージョン。動物園に行ってもガラスの向こう側にいるので、普段は声を聞くことができない。ファンにとっては貴重なプレゼントとなった。

 王子動物園ではタンタン(旦旦、メス、24歳)が暮らす。屋内施設は3月31日まで閉鎖されているが、タンタンが外にいれば見ることができる。

 パンダが最初に来たのは2000年。1995年に発生した阪神淡路大震災の復興のシンボルとして、中国からコウコウ(興興)とタンタンがやって来た。コウコウは繁殖できないこととがわかって中国へ戻り、代わりに来たオスは10年に死亡した。それから約10年間、タンタン1頭だけとなっている。

 神戸市は中国野生動物保護協会とパンダの共同繁殖研究の協定を結び、タンタンを借りている。この期限が今年7月なので、市は延長を望んでいる。

 王子動物園も、タンタンの写真などをツイッターに投稿。スタッフが上から撮った写真もあり、通常は見られない“お宝ショット”も堪能できる。

 このように休園中などでもネットを活用すれば、パンダで癒やされることはできるのだ。一方で、新型コロナウイルスの影響は意外なところにも波及している。

 一つはパンダの誘致が揺らいでいることだ。中国の習近平国家主席は4月に来日する予定だったが延期になった。来日では新たなパンダの誘致が期待されていただけに、受け入れを検討していた動物園関係者は残念がる。

 受け入れを検討していた主なところは、1頭いる王子動物園(神戸市)のほか、大森山動物園(秋田市)、八木山動物公園(仙台市)、日立市かみね動物園(茨城県日立市)。各自治体は、パンダが来た場合の経済効果などに注目してきた。安倍晋三首相も18年10月に中国の李克強首相と会談した際、新たなパンダ貸与の希望を伝えていた。

次のページ
上野動物園のパンダの引っ越しもずれ込む