家族療法では父親だけでなく、母親にも子どもにも言動を見直すよう働きかけ、家族全体の機能調整を図る点が大きく違う。ただ、発達障害の専門家がいる医療機関を探す必要がある。
発達障害を持つ親が学校や職場でのつらい経験から自尊心を喪失し、子育てに困難を生じていることも多い。そうしたケースでは、当事者会への参加が有効だと東洋大の岩田千亜紀助教は指摘する。さらに「解決志向型アプローチ」によるグループワークを行うと効果的だという。「解決志向型アプローチ」も家族療法と同様、問題や原因はあえて追及しないのがポイントだ。
「自分がどうなりたいか、日常の小さなことでいいので目標を設定し、何をしたらうまくいきそうか考えます。実行に移した結果、できていないことではなく、『◯◯できたのはなぜ?』と考えて、良かった点を強化していくのです」
ADHD当事者で整理収納アドバイザーの西原三葉さんも、同様の思考法で気持ちを切り替えることができた。以前はミスをするとパニックになりがちだったが、パニックを起こしたことを反省するのではなく、「少し時間をおけば落ち着けた」という点に着目した。「パニックになってもいい。冷却時間を持てば大丈夫」と考えるようになった。西原さんは言う。
「交通系ICカードを落とした時にも、ADHDの当事者会の仲間から『2枚持てば大丈夫』と言われて心が軽くなりました。片付けも毎日1カ所、5分だけでいい。できたら自分を思いきりほめる。仲間を作り励まし合う。その繰り返しで自信が生まれ、自分を責めなくなりました」
学校での支援も課題だ。親が持つ発達障害に一番気づきやすいのは、学校現場だ。アエラが実施したアンケートでは、「気づいても親のサポートまでは難しい」「個人情報の壁があり、情報がほとんどない中でサポートしても、支援が的はずれになる」などの声が寄せられた。
特別支援教育に約30年携わってきた創価大学の安部博志准教授は、「『特別な支援』と身構える必要はなく、シンプルな支援でいい」と強調する。