「『困った子ども、困った親』をどうするかではなく、まずは『困っている子、困っている親』と捉え直すことが大切です。一番困っているのは当事者ですから」

 発達障害の傾向を持つ親は、自身の失敗体験から「また否定されるのでは」と疑心暗鬼になりがちだ。そこに想像力を働かせ、「何か困ったことはありますか」「もしかして○○で困っていますか」と先生のほうから聞く。「この先生には困っていることを言ってもいい」という信頼関係を築くことが、支援の出発点だという。

 安部准教授は「子どもでも親でも100人いれば100通り」を前提に、プリントなども誰にでもわかりやすくなっているか、見直してほしいと話す。

「長々と文章で書かない。『明日の持ち物は三つです。・・・』というふうに、『端的に』『具体的に』『優先順位をつける』がコツです」

 ADHD当事者であり、その経験を生かして社会福祉士・精神保健福祉士の資格を取得、「支援者」としても働く女性(47)は「『発達障害』という言葉の認知は広がったが、半端な知識で十把ひとからげに捉えられがち。ひとりひとりがどう困っているかよく見て支援してほしい」と訴える。

 女性は長男にADHD、長女にASD、夫にもASDの傾向がある。子どもたちには、こう伝えている。

「世の中にはいろんな人がいるんだよ。あなたたちもいろんな人の一部。我慢せず、困っている時は言っていい。ただ、助けてもらうだけじゃなくて、あなたたちの得意なことを生かしたり、譲り合ったりすることも大切。お互いさまだよ」

 困っていることを「障害」にするのは社会だ。困っている人が困っていると言える社会は、みんなにとって生きやすい。(編集部・石臥薫子)

AERA 2020年4月13日号

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