チームで強くなっていくためにはコミュニケーションが大切です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために学校が休校になり、自宅から出ないことや近距離で人と触れ合わないことなど、直接コミュニケーションをとらない方向の対策が求められています。スポーツの指導にとってこれまでにない厳しい状況です。

 東日本大震災で福島原発の事故が起こったとき、私自身も不安な気持ちになりましたが、指導者が動揺した姿を見せるのはマイナスでしかありません。情報を集め、自分を落ち着かせることを心掛けました。今回も毎日感染者が増えるニュースが届く中、冷静に対処していきたいと思います。

 味の素ナショナルトレーニングセンターで、ほかのチームの選手やコーチに会う機会があります。五輪を目指す仲間と短時間でも話をすることは、やはり励みになります。

 私のチームは少人数で練習を続けています。「予定通り五輪が行われていたらできなかったことをやろう」と提案したら、26歳で最年長の小堀勇気は「ウクレレを習おうかな」と話しました。思わず笑ってしまいましたが、そんな気分転換も必要でしょう。

 先日はちょっと変わった動きの補強運動を取り入れて、選手たちに笑顔が広がりました。いつも通りの日常生活は送れなくても、できることはたくさんあるはずです。柔軟な発想で様々な工夫をこらして、練習を続けていきます。

(構成/本誌・堀井正明)

週刊朝日  2020年4月17日号

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平井伯昌

平井伯昌

平井伯昌(ひらい・のりまさ)/東京五輪競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる』(小社刊)など著書多数

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