新川帆立(しんかわ・ほたて)/1991年生まれ。プロ雀士、弁護士を経て、「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した『元彼の遺言状』で、2021年に作家デビュー。『競争の番人』(22年)とともに、2クール連続でテレビドラマ化された(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
新川帆立(しんかわ・ほたて)/1991年生まれ。プロ雀士、弁護士を経て、「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した『元彼の遺言状』で、2021年に作家デビュー。『競争の番人』(22年)とともに、2クール連続でテレビドラマ化された(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』は、新川帆立さんの著書。礼和、麗和、隷和……六つのレイワを舞台に、架空法律、社会風刺、ユーモアといった様々な要素を盛り込みながら、パラレルワールドへと誘う。「じつは、全六話の並びも工夫した」と、新川さん。おもに第一、二話は、女性の生きづらさや社会の抑圧を描いた“ガールズパート”。第四、五話で男性の生きづらさを表現した作品を組み込み、最終話は“男性社会で闘う女性の物語”で締めている。新川さんに、同書にかける思いを聞いた。

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 自然科学的な空想に基づいた小説。「サイエンス・フィクション(SF)」は、一般的にはそう定義されることが多いが、新川帆立さん(31)の解釈はもっと幅広い。議論の積み重ねの先に進化があり、発展がある。そうした意味では「法律」もまた、サイエンスであると考える。

 新刊『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』は、架空の法律がもたらされた世界を描く“リーガルSF短編集”だ。

「自然科学を題材にした小説であれば、新技術の登場により人の気持ちに変化が生まれ、物語が生まれる。同じことは社会科学の分野にも言えるはずで、新たな法律ができることで特有の問題が生じたり、常識が変わったりする。小説として成立するな、と思っていました」

 新川さん自身、大学では法学を専攻した。禁酒法、労働法、メタバース関連と、編集者が提案するお題に対し「本音と建前がぶつかり合いそうな点をピンセットで摘(つま)むように」、架空の法律を考えだし、存在するかもしれないもう一つの世界を描き出した。

 たとえば、第六話「接待麻雀士」で描かれるのは、「健全な麻雀賭博に関する法律」が制定された世界。表向きは認知症予防が目的だが、裏では賄賂を合法的に収受したい政治家たちの思惑が渦巻く。

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