駅というのは、場所によって市町村の玄関口にもなる。ところがさまざまな理由で、駅名と所在市町村名が一致しない駅や、ホームが境界にある駅も存在する。そんなややこしい駅をご紹介しよう。
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■品川区にない品川駅、南側にある北品川駅
品川駅は日本の鉄道開業に先立つ1872年5月7日(旧暦)の仮開業に伴って開業した、日本で最も古い駅。JR東日本の東海道本線や山手線を筆頭に、京急電鉄、JR東海(東海道新幹線)が集う広大なターミナルだ。不思議なことに所在地は品川区ではなく、港区である。
東京~横浜間などに鉄道の建設が決まったのは、1869年11月10日(旧暦)。品川駅の場所が決まった当時の所在地は、品川県だった。これが品川駅命名の諸説のひとつとされている。
ところが、1871年7月14日の廃藩置県で消滅し、属していた宿村の多くは東京府に編入された。後に東京市が制定され、1947年の東京23区施行前でも、品川駅は品川区に属していない。
なお、京浜急行電鉄の北品川駅は品川区に所在し、開業時の駅名は「品川」を名乗っていた。品川乗り入れを機に「北品川」に改称されたが、所在地は品川駅の南側にある。
■目黒に設けられなかった目黒駅
JR山手線、東急目黒線、東京メトロ南北線、都営地下鉄三田線が集う目黒駅も、目黒区ではなく品川区に所在する。当初は当時の目黒村の目黒川沿いに建設される予定だったが、農家が蒸気機関車の煙で農作物が荒れることを懸念し、猛反対した。
その結果、農家の主張が受け入れられ、目黒駅は隣の大崎村に建設という運びになり、1885年3月16日に開業した。日本の鉄道は蒸気機関車が牽引する列車からスタートしたため、明治時代にはこういうエピソードが各地に残る。
■足立区の北千住、荒川区の南千住
東京でかなりややこしいと思われるのは、「千住」を名乗る駅である。千住を名乗る駅は3つあるが、北千住駅(JR常磐線、東武伊勢崎線、東京メトロ日比谷線・千代田線、つくばエクスプレス線)、千住大橋駅(京成本線)は足立区、南千住駅(JR常磐線、東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス線)は荒川区と、所在する区が異なるのである。