ジャージに着替え、隣同士で施術用ベッドに横になります。仕切りはないので、お互いの様子は(見ようと思えば)丸見えです。
手慣れた手つきのストレッチに身を任せながら、「ここは一気に店舗を増やしたけれど、どこまでが直営で、どこからがフランチャイズなんだろう?」なんてことを考えていたら
「ぃぃぃぃぃ痛い! ぃぃ痛い!」
と、隣のベッドから彼女の小さな叫び声が聞こえてきました。見ると、お尻のあたりをグイグイ伸ばされています。そうでしょう、そうでしょう。失恋とは痛みを伴う自己改革。せめて体だけはスッキリさせて、また大きく羽ばたいて!
余裕たっぷりで悶絶失恋女子の姿を眺めていましたが、肩周りのストレッチで今度は私がイダダダダダ! と叫び声をあげるハメに。うっかり忘れていたけれど、私は中年。これって、遠い昔に親が患っていた四十肩の前兆なのでは? イヤだ、もうそんな年頃か。
20代半ばと40代前半の女ふたり、持家も伴侶も子どももない点では同類ですが、後者の体は確実に老いている。「全米よ、これが悪い見本だ!」という気分になりましたが、まぁこれも人生だ。
60分で6600円、体の可動域を広げた失恋女子と中年女は、肩甲骨を広げ、ホルモンを焼きに夜の街へと羽ばたきました。失恋には肉も効くのです。