新社会人や学生が新たにひとり暮らしを始めるおめでたい4月。しかし、場合によっては大切な人との別離や離婚など、いろいろな理由でひとり暮らしを始めることも。そんな場合でも、「ひとりの時間を楽しむ」ことで豊かな生活を送れると、料理研究家・行正り香氏はいう。

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 私は18歳で家族と離れ、34歳までひとりの生活が続きました。これからだって、あるかもしれません。「ひとりの時間を楽しむ」ことができたなら、その先には豊かな生活が存在するような気がします。自分のために掃除をし、整理整頓し、買い物に行き、食べたいものを作り、見たい映画を見ることができる人は少なくとも自立している。パートナーや組織に生き甲斐やしあわせ、心地よさを求めるのではなく、小さな日常の中に自分でしあわせを探すことができる。私にとって一緒にいて心地よい人は、どこか独立した強さのある人です。

 自分で料理ができたなら、定年後まで妻に「おい、めし!」と怒鳴る必要はありません。妻が外出して帰ってこない日におなかをすかせてイライラ待つ必要も、コンビニごはんを毎晩食べる必要もありません。自ら食べたいものを作り、時には親しい友人を呼んで、楽しい時間を過ごすことができるのです。買い物、料理、後片付けは、とてもクリエーティブなエンターテインメント。もちろん、そう感じるまでには、習い事のように同じことを繰り返し、技術を覚えなくてはなりません。でも、その先にある自由といったら!! 「今夜はイタリアかな」「韓国かな」「タイかな」と思ったら、近くのスーパーで買い物をし、その国の料理を作って民族音楽をかけ、旅に行ったような気分すら味わうことができるのです。

 今週はレンジでカンタン、栄養バランスのよい「ベーコンキャベツパスタ」なんていかがでしょう。レシピは「週刊朝日」で紹介しています。

※週刊朝日 2012年4月6日号