新型コロナウイルスは、このセーフティーネットを遮断してしまったのだ。

 ミャンマーも同じ状況だという。首都には、仏教系の援助組織は食事を提供しはじめたが、失業者の数が多すぎるという。

 タイでは規制の緩和がはじまっている。田舎に帰ることができるようになったが、ソイ・ナナにいる知人はこういう。

「ホームレスはそんなに減っていません。知り合いになったホームレスに訊くと、実家の人たちが怖がり、帰ってくるなといわれたっていうんです」

 タイの田舎、東北地方のコンケーンの知人に訊いてみた。

「たしかにバンコクから帰ってきた人は怖いっていう意識があるけど、本音は少し違う。このへんも過疎化が進んで、経済状態はよくない。もう、田舎が支えられないんです。コロナを口実にしている家もあると思う」

 新型コロナウイルスは、東南アジア諸国の経済環境を浮き彫りにしている。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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