「もちろんワクチンの有効率は100%ではなく、接種してもインフルエンザのように一定数は感染する。だが、それを言い出すときりがない。厳しい臨床試験で効果が証明されたワクチンを接種した人は“安全”とみなして競技に挑んでもらっていいと思います」(勝田さん)
ワクチンの実用化が五輪開催に間に合わない場合、勝田さんは全選手・関係者へのPCR検査の義務付けが必要だという。ただ検査の精度は50~70%ほどと言われ、見逃しもあるため、選手・関係者には来日後2週間はトレーニング設備付きの施設で待機してもらう、つまり事実上の「隔離」を行うことも併せて提案する。
ただ、来夏の時点で日本政府が入国を認めない国があった場合に選手は参加できるのか、ワクチン接種済みや検査で陰性だった人以外は入国を認めないのか、その証明はどうするのかなど、解決するべき課題は多い。
二つ目の条件は、五輪の1~2カ月前に日本国内で新型コロナの感染が収まっていることだ。リオ五輪の開幕約1カ月前には、当時ブラジルで広がっていたジカウイルスを懸念して松山英樹らゴルフのトップ選手10人以上が出場を辞退した。東京五輪でも、国内感染を抑えなければ出場辞退が相次ぐ可能性がある。具体的な条件として勝田さんは「理想的には国内の新規感染者が2週間ゼロ」という。
WHO事務局長上級顧問で、キングス・カレッジ・ロンドン教授の渋谷健司さん(公衆衛生)は「日本は検査数が少なく、国際的には安全だとみなされていない」と指摘し、こう語る。
「日本がグリーンゾーン(非感染エリア)かどうかを判断するのは日本ではなく相手国。オリンピックをやるなら徹底的に検査して、グリーンゾーンであることを示さなければならない」
選手の安全が確保された上で、開催に必要な三つ目の条件が、選手選考が公平に行われることだ。新型コロナは気温が下がると感染が増える傾向があるとされ、北半球と南半球で流行を繰り返すおそれがある。一部の国で入国制限などが続けば、選考会に出場できない選手が出てくる。IOCは4月、東京五輪の各競技予選は全選手の公平な参加や適切な準備ができるようになってから再開するよう求めている。