老後資金準備へ向けた「自助努力」の決定打の一つとされる「NISA」(少額投資非課税制度)の大拡充が昨年末、決まった。投資枠は現行の2~3倍になり使い勝手もよくなる。「フル活用」しない手はなさそう。2024年からの開始だが、専門家はすぐ準備を始めたほうがいいという。
【図表】「フル活用」しない手はない!「新NISAのここがポイント!」(他2枚)
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「普通の人ならリタイアへ向けた資産形成はこれとiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)だけで十分になりますね。つい数年前に『老後資金2千万円問題』が話題になりましたが、そこで言われた不足分を十分に準備できる仕組みができそうです」
こう話すのは、ファイナンシャルプランナー(FP)界の大御所、神戸孝氏だ。トピックは「NISA」制度。政府が昨年末、資産所得倍増プランの一環として打ち出した大拡充策(以下、新NISA)を評しての感想だ。
NISAは金融取引で得られる利益(値上がり益や配当金)に通常約20%の税金がかかるのを非課税にする制度。一般生活者の資産形成支援を狙って、国内外の株式など幅広い商品に投資できる「一般型」が2014年に、主に長期投資用の投資信託に限った「つみたて型」が18年から始まった。
今回の拡充は、超高齢化でますます自助努力を求められる老後資金対策の「切り札」を目指したもの。神戸氏が手放しで評価するだけあって、新NISAは確かに思い切った拡充が図られている。
新NISAは来年24年のスタートだ。
まず利用できる金額が大幅に拡充される。一般型は「成長投資枠」に衣替えし、投資枠は現在の年間120万円が同240万円に倍増となる。同じく「つみたて型」は「つみたて投資枠」として、こちらは現行の同40万円が3倍増の同120万円になる。ただし金持ち優遇とならないように、二つの枠合計で1800万円とする「生涯投資枠」が設けられた(うち成長投資枠は1200万円が上限)。
「それでも夫婦2人で考えると、合わせて『3600万円』もの非課税枠になります」(神戸氏)