ところで、空き家よりさらに買い手が見つかりにくい厄介な存在が、地方の山林だ。そんな山林の引き取りサービスを手がけるのは、税理士の佐藤和基氏だ。複数の不動産会社と提携し、昨年7月にサービスを開始した。佐藤氏はこう話す。

「もともと専門だった相続の相談に乗るうちに、山林の扱いに困っている人が多いことに気づきました。両親などから引き継げば相続税がかかりますし、利用していなくても持っているだけで毎年、固定資産税を払う必要があります。特に盲点なのが相続税。立地や評価方法によっては、住宅地並みの高い税額を取られることもあります」

 例えば親から引き継いだ遺産1億円のうち、山林が4千万円を占めていたとする。遺産全体にかかる相続税が1220万円だった場合、山林を相続せずに手放し、6千万円分だけ引き継いだとすると、相続税は310万円に減る。納税額を実に4分の1程度まで減らすことができるのだ。

 佐藤氏はサービス開始後1年足らずで60件余りの依頼や相談を受けた。相談は北海道や岩手、茨城、岡山、広島など、主に地方のオーナーからが多い。

「マイナスの資産も、手放せばゼロに戻せる。ただし、家や土地は売ろうと思っても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。山林の場合は売りに出してから10年後でも売れたらいいほう。国や自治体に寄付したり、相続放棄をしたりする手もありますが、相続放棄はすべての遺産を諦めなければなりません。早め早めに動く必要があります」(佐藤氏)

 政府も近年は、所有者不明土地を減らす対策を強化している。18年11月には、長期にわたり相続登記がなされていない土地について、法定相続人に登記手続きを促す仕組みができた。

 今年4月には、登記簿上の所有者が死亡している場合、その土地を現在所有する人に氏名や住所など固定資産税の徴収に必要な事項を申告させる制度ができた。来年度からはさらに、所有者が不明な場合、使用者に固定資産税を課す予定だ。

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