「町への移住者も増えていますが、孤独死や相続は大きな課題です」(同)
リゾートマンションの持ち主は都心に暮らす人も多い。所有したまま利用しなくなり税金を払わないケースもある。そこで町は2000年代半ばに、都内在住の所有者から固定資産税を取り立てる業務に特化した東京事務所を設置した。前出の税務担当者はこう話す。
「滞納件数は一時期に比べ落ち着きましたが、今回の新型コロナウイルスの影響でまた増える可能性もあります。引き続き今の体制を維持したい」
実はこうした問題は、リゾート地に限ったことではない。総務省の「2018年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の数は849万戸と過去最高だった。住宅全体の1割超を占め、これからもっと増えると予測されている。
空き家や空き地の中でも、登記簿などの情報を参照しても所有者がすぐにはわからなかったり、判明しても連絡がつかなかったりする「所有者不明土地」の問題は特に深刻だ。有識者らでつくる「所有者不明土地問題研究会」が17年にまとめた報告書によると、全国の所有者不明土地は16年時点で計約410万ヘクタールに達した。九州の面積を上回る規模だ。
空き家問題は行政だけでなく、所有者にとっても死活問題だ。「いらない不動産」の扱い次第で、大きな損失につながる恐れもある。不動産コンサルタントの長嶋修氏は「持て余した家や土地があるなら、少しでも早く手放したほうがいい」と主張する。
「今後、少子化によって人口減少が進み、不必要になった不動産を売りたくても買い手が見つからない状況が増えると考えられます。思い入れがあったり、相続でもめたりするなど事情はあったとしても、放置すればするほど損をします。買い手が示す価格が低くても、引き取ってもらえるなら売るべきです」
長嶋氏は、特に首都圏など都市部の郊外のベッドタウンにある不動産が要注意だと指摘する。高度成長期以降、都市部に通勤・通学する団塊の世代が一気に流入した経緯があるからだ。高齢化が進んで街を離れる人が増えれば、地価の下落や空き家の増加ペースが加速する可能性が高い。