2019年に改訂された診療ガイドラインで、「手術+補助療法」が基本とされた膵がん。その手術や補助療法に、近年新しい手法や装置が用いられるようになってきた。患者にどんなメリットがあるのか。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、専門医に取材した。
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膵がんでは、手術単独よりも、手術前後に抗がん剤や放射線などの補助療法をおこなったほうが、長期生存が望める。がんが主要な血管や周囲のリンパ節に食い込みやすい(浸潤、転移しやすい)特徴があるため、がんが小さく、手術で切除できても、目に見えないがん細胞が残っている可能性があるからだ。
それゆえ、新しいガイドラインでは、基本的に手術ができるがんに関して、「手術+補助療法」がスタンダードになっている。
「膵がんの手術に対する考え方で重要なのは、いかに患者さんの体力を残し、補助療法に臨めるようにしておくかです」と話すのは、日本医科大学病院消化器外科准教授(神栖済生会病院院長)の中村慶春医師だ。
一般的に膵がんの手術は、がんのある部位で術式が異なる。がんが膵頭部(右側)にある場合は、膵頭部を十二指腸と胆のう、周囲のリンパ節などと一緒に切除する「膵頭十二指腸切除術」を、膵体部(真ん中)や膵尾部(左側)にある場合は、膵体尾部と脾臓、周囲のリンパ節などを一緒に切除する「膵体尾部切除術」を実施。遠隔転移はなく、膵臓全体にがんが広がっているときは、膵臓を十二指腸や胆のう、胆管、脾臓などと一緒に切除する「膵全摘術」がおこなわれる。腹腔鏡による膵体尾部切除術が2016年に、健康保険の適用になった。
■膵体尾部切除術が 健康保険適用に
腹腔鏡手術とは、おなかに5~12ミリの小さな穴を4~5カ所開け、そこに内視鏡や鉗子などを差し込んで、モニターに映し出された患部を見ながらがんを切除する手術法。胃がんや大腸がんなどの消化器がん、婦人科がん、泌尿器がんなどで広くおこなわれている。