日本内視鏡外科学会のアンケート調査によると、膵がんに対する腹腔鏡手術の実施数は17年は192件。前年よりも100件ほど増えている。

 膵がんの腹腔鏡手術を早期から始めているのが、中村医師を中心とした膵臓外科チームだ。

「腹腔鏡手術は開腹手術に比べ、キズが小さく、出血量も少ないことが、多くの研究結果をまとめたメタ解析でもわかっています。手術によって患者さんにかかる負担が軽くなれば、余力が残った状態で補助療法を受けることができます」(中村医師)

 膵臓は胃の裏側のからだの奥深くにあるため、おなかを開ける手術では切開創を大きくしなければならない。このため患者のからだへの負担は大きい。

「腹腔鏡手術で用いるモニターに映し出される患部は、10~15倍に拡大されています。開腹だと見えにくい膵臓の裏側にある血管や神経なども、鮮明に映し出すことができます」(同)

 執刀医だけでなく、助手や看護師も同じモニター画面を見ながら手術に関わる。キズが小さいだけでなく、多くの目によるチェック機能が働くため、安全性の高い手術でもあるという。

 ただし、膵体尾部のがんでも主要な血管である総肝動脈や上腸間膜動脈、腹腔動脈などにがんが食い込み、血管ごと切除して残った血管をつなぎ合わせる必要があるケースや、他の臓器までがんが広がっているケースには、開腹のほうが向いているという。また、高齢者や心臓、肺に持病がある人も適応とならないようだ。

■周囲の臓器を避け 強力照射が可能に

 膵がんの放射線療法で今、注目を集めているのは、新たな放射線療法。MRIと放射線装置が一体となった「MRIdian(メリディアン)」による治療だ。国立がん研究センター中央病院が、膵がんにMRIdianを使い始めたのは17年。これまでに40人ほどに施行している。

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