福島第一原発の事故以来、中国薬膳を日本で教える本草薬膳学院の辰巳洋(たつみなみ)院長(58)のもとには、多くの生徒から放射能から体を守る効能のある薬膳を教えてほしい、との声が寄せられているという。
「そもそも薬膳料理とは、中国の漢方を含む東洋医学である中医学の考えに基づき、効能のある食材を使うことで身体を健康にする料理のことです。薬膳によって放射能の汚染物質を体内から排出し、身体を健康にすることは可能です」
そう語る辰巳さんは、北京中医薬大学中医学部を卒業。89年の来日後は、田園都市厚生病院で漢方相談を担当し、02年に学院を設立した薬膳の専門家だ。
もともと中医学は、がんの放射線治療の副作用に対する研究をしていた。放射線は身体に「熱毒」を与え、臓器や体表を損傷するとされる。そこで、薬膳で体の免疫力をあげて内臓の働きを活発にし、放射線でダメージを受けた身体の熱を冷まして、血の循環をよくし、排尿、排便を促して体内の毒を出すのだという。
そこで、疲れがたまった夜向けの「放射能フリー食」を提案してもらった。
まず、主食の「さつま芋と玄米ご飯」だが、はと麦と玄米は繊維質を多く含み、便通や利尿促進効能を持つ。主菜の「イカとアスパラガスの炒めもの」には、疲れた体の血液を補う作用があるイカを1杯丸々使った。
「栄養分はすべて血液によって体内に届けられますから、血の流れをよくすることが健康の基本です。アスパラも便通に効きますし、胡桃(くるみ)は身体を温めます」
●利尿便通を促す中国3千年の力
副菜は、血液の循環を促し、整腸作用もあるきくらげを使った「きくらげの香り和え」。きくらげは放射性セシウムに似たカリウムが豊富なため、これを多く摂取することで、体が放射性セシウムを吸収するのを防ぐ効果も期待できる。
汁物は、利尿や便通の改善に効くみそやこんにゃくにごぼう、気分を落ち着かせる効能のある大根を使った「具だくさんのみそ汁」。
食事のあとは「冬瓜(とうがん)と無花果(いちじく)のデザート」を。
「日本では冬瓜をデザートに使うのは珍しいかもしれませんが、利尿作用のあることで知られる食材です。便通効果のある無花果と一緒にゆでて、免疫力を高める効果のある蜂蜜を和えて召し上がってください」
日本政府は放射能に汚染された食品について「ただちに健康に影響はない」と繰り返した。しかし、辰巳さんは言う。