「筑駒は文化祭などの行事もやりきって、それでいて受験でも結果を出す学校です。そもそも、中学・高校入試で受かっている子のレベルが段違いなんです」

■点数至上主義になるな

 冒頭の渋谷教育学園渋谷も、中高一貫だ。同校が進路指導で意識するのは「大学はあくまでも手段でしかない」ということ。毎年10人以上の生徒が海外大を志望し、米ハーバード大やプリンストン大に進む生徒もいる。すると、東大も自然と相対化され、目的に向かって受験勉強に励む環境が育まれる。

 だが、悩みもある。

「点数至上主義になるな」

 同校の教室では、そんな言葉がたびたび飛び出す。

高橋進路部長が言う。

中学受験をする生徒の多くは小学生の頃から塾に通っています。成績順以外に自分をはかる尺度がない子もいるんです」

 生徒の偏った価値観をリセットするのも教師の役目。成績は伸びしろをはかるツールであるという考え方を口酸っぱく言い聞かせる。なかなか考え方が切り替えられなかった生徒も、「中2に上がる前には落ち着いてくる」と高橋部長。

■「校長講話」が大学選びに影響

 同校が重視するのは、1996年の創立以来続けている「校長講話」の時間だ。6年間のシラバスに組み込まれ、卒業までに全30回で設計され、整理整頓の大切さや自由、自己実現まで幅広いテーマを説いていく。一見、受験には無関係に思えるが、高橋部長は首を横に振る。

「校長講話では、人生をどう作っていくのかといったことを話します。6年を通して自分の将来をイメージすることになるので、大学選びにも大きく影響するのです」

(編集部・福井しほ)

AERA 2020年8月31日号より抜粋

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