◆悲しみは大切なものとして持っていていい◆

 幸崎順子さん、高橋操さん、清賀子さん夫妻、島本多江さんはいずれも、ケアタウン小平の遺族会「ケアの木」の世話人を務めている。「ケアの木」は、遺族が定期的に交流できる場として、3年前にできた。互いの死別体験を語り、悲しみやつらさをわかち合う。

 山崎さんはこう語る。

「元気そうに見えて心に長く喪失感を抱えている方もいます。でも、悲しみは大切なものとして持っていていいんです。いつでも参加でき、どういう気持ちでいてもいい場所があることが大事だと思っています」

 すでに100人を超える会員がいる。家で看取った人が多いが、病院で看取った人もいる。共通するのはスタッフへの感謝の気持ちだと世話人代表の豆白洋司さん(65)は言う。

 幸崎さんは夫を失って2年ほどは、ケアタウン小平に足を踏み入れることができなかった。感謝の気持ちを伝えたい。でもみんなの顔を見た途端、つらさが一挙にあふれてしまう。

「それで朝、散歩と称してケアタウンの前に行って、お辞儀だけしてました。そうしたら偶然、山崎先生に会って、ボランティアにおいでって誘われたんです」

 現在は夫がデイサービスに通っていた水曜日に、おかずづくりなどを手伝う。

「いまも一人で寂しくて、泣きながら自転車をこいでケアタウンに行くこともあります。夫のことを知っている看護師さんたちに会えるのが何よりうれしい」

 島本さんも、水曜日にボランティアに行っている。

「大してお役に立てないので、むしろ行かせていただいてる感じです(笑い)。3年目には3年目なりの、10年目には10年目なりの悲しみがある。遺族会やボランティアの場は、それが癒やされるところです」

 遺族もまた、ケアタウン小平の活動を支えている。

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ケアタウン小平:「24時間の在宅ケア」と「末期がんの患者に限らないホスピスケア」を理念に掲げ、2005年に開設。訪問診療や往診を専門とする山崎章郎医師らのクリニックや、訪問看護ステーション、デイサービスセンターなどが入る

週刊朝日

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