うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や5歳児母。日々子育てに奮闘する中で見えてきた“なっちゃん流教育論”をお届けします。
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人は話を聞くとき、内容のいかんに関わらず、「誰が話したのか?」「どんな状況で話したのか?」「周囲の反応は?」といった要因によって、どのくらい肯定的にその話を受け入れるか変えてしまう性質をもっています。
■3人以上が同じ意見だと、自分も同調してしまう
たとえば、話を聞いて、「この意見はなんだかおかしいぞ」と判断したものでも、大勢の人がその意見に賛同していると知ると、「この意見は正しいかもしれない」と自分の考えを変えてしまったことはないでしょうか。3人以上が同じ意見を言っていると、「みんながそう言うのなら、何か理由があるはずだ」と、自分も同調してしまうようです。
このように、他人が何を正しいと考えているかを軸にして自分の意見を決めてしまうことを、心理学用語で「社会的証明」といいます。
そして、嫌いな相手の話よりも、好意を抱いている相手の話のほうが、すんなりと頭の中に入ってきやすいといわれています。いい大学を出ているか、資格をもっているか、といった「権威」も判断の基準になります。つまり人は、話の中身そのものではなく、自分を取り巻く状況により、受け取り方を変えてしまうのです。
それは、学校に通っている子どもたちの、授業を聞く姿勢にもあてはまります。学校での先生と生徒の関係は、勉強面に大きな影響を与えるのだそうです。生徒が先生を尊敬しているか、嫌っているか、信頼しているか、苦手意識をもっているか、そんな人間としての関係性によって、授業をどのように聞くかが変わってしまうのです。
外国人が日本語を教わる授業で、先生が生徒たちの名前を、親しみを込めて日本語のニックネームで呼ぶようにしてみた、という実験があります。このとき、外国人の生徒のうち、なんと92%が、「ニックネームで呼ばれることで、学習に影響が出た」と答えたのだそうです。
具体的にどのような影響が出たかというと、「学習意欲が高まった」「質問がしやすくなった」「学習に集中できた」「効率がよくなった」「出席回数が多くなった」、というものでした。
対して、先生が生徒よりも一段高いところにのぼり、厳格な態度で授業を行ってみたところ、生徒たちの学習意欲が軒並み低くなってしまうという正反対の調査結果が出ました。
この実験から、「教師と生徒の関係は授業の内容やスタイル、教師の能力よりも、学習に影響を与える」という興味深い結論が出されました。
今年はコロナにより、学校では子どもたちも先生も距離を保ち、表情が分かりにくくなるマスクをつけ、なるべく接触しないように指示されました。そんな状況だからこそ、先生と子どもたちの関係には、特に注意を向けるべきです。