私は子どもたちを深く愛しておりますし、とても大切で、どんなことをしてでも護りたいと思える存在です。なのに、自ら可愛い我が子たちを虐めて泣かせる、というのは私の我慢が足りないのでしょうか。
私が私の両親からされたこともないような叱り方を、我が子たちにしてしまうなんて、と反省するのですが。毎日むちゃくちゃ叱るわけではないし、その際に手が出るわけでもありません。長男も次男も、私が怒り狂っているときには、今はお母さんダメだと思うらしく、嵐が過ぎ去るのを待っている節があります。あとから「おかあさん、おこりすぎだよー!」と言われることがよくあります。
みんな、むちゃくちゃに叱りたい気持ちを抑えて、毎日家事育児をされているのか、私が性格破綻者なのか……心の持ち方を教えてください。
【鴻上さんの答え】
ハルコさん。大変ですね。7歳と5歳と1歳の三人の息子さんですか。修羅場の毎日が見えるようです(汗)。
ハルコさんは、性格破綻者なんかじゃありません。
「ほがらか人生相談」には、同じような悩みを持つ母親からの相談がたくさん送られてきます。
「叱る」ことと「怒る」ことの違いは大切ですが、ちゃんと区別することは本当に難しいんですよね。
僕は二十代の頃、演出家としてよく俳優を怒りました。旗揚げした劇団は大学のサークルから始まりましたから、プロになるという意識がバラバラでした。
しっかりとプロになるんだと決意した人間もいれば、青春の思い出として、とにかく楽しくノンキにやれればいいと思っている人間もいました。
当然、ノンキな人は、稽古に遅刻したり、セリフをちゃんと覚えてなかったりしました。
そのたびに、演出家の僕は怒りました。
ただし、本当に怒っている時は、絶対に怒ってはいけないと決めていました。
本当に怒ってしまった時は、何を言い出すか自分で責任が持てなかったからです。
絶対に言ってはいけない言葉を口にして、相手を深く傷つけたり、取り返しのつかないことにならないように、本当に怒った時は、つまり極度に感情的になった時は、黙りました。深呼吸したり、稽古を中断したり、その場所から出ていったりして、冷静になるまで待ちました。
怒る時は、怒っているように見えて、じつは冷静な時でした。