「40年以上、続いてきたコメの生産調整を見直します。いわゆる減反を廃止します」。安倍総理がドヤ顔で、こう大見得を切ったのは13年暮れのこと。農業をアベノミクス成長戦略の柱とし、海外の安いコメに対抗できる競争力のあるコメ農家を育成するという「夢」が語られた。しかし、実際に減反が廃止された18年以降も、巨額の補助金を投入して主食用のコメ以外の農産物の生産に誘導することで生産量を抑制し、コメの高値を維持する「隠れ減反政策」がとられた。そのあおりで、消費者はその原資となる税金を取られた上に高値のコメを買わされ、また、加工用米などの供給も滞って加工品生産者が窮地に陥り、外食業界も大きな被害を被った。
それでも安倍政権、そしてそれを引き継いだ菅政権は全く意に介さない。「改革」とは名ばかり。選挙のための利益誘導という旧態依然の利権政治を続けているのだ。
「改革」という言葉に騙されてはいけない。
※週刊朝日 2020年10月23日号
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など