「『今度Zoomの会があるからやり方教えて』と、ひきこもっている子どもに聞けばコミュニケーションのきっかけにもなる。子どもから教えてもらったら、報酬として必ずお小遣いをあげて。家の中で就労体験ができる機会にもなる」
ただ、リアルでの開催を希望する声も根強い。参加者の一人である50代の女性は、以前にひきこもった経験があり、現在は妹がひきこもり気味。東京都多摩市で昨年から「引きこもり女子会」を開催している。「体温や人とのつながりをより感じるので、なるべく対面でやりたい」と話す。
また8050に該当するような中高年の家族は、ガラケーの人も多く、ITリテラシーが低い場合もある。結果、支援のサービスからさらにこぼれ落ちる人もいる。大橋さんはこう言う。
「政府にはマスクよりスマホを配ってほしい。経済事情でスマホやパソコンを持てない当事者は多い。対面かオンラインか、もしくはハイブリッド。どれで支援を受けるか、当事者が選べることが大事です」
■オンラインでゆるく
その「選ぶ」ための情報をインターネットで提供している人がいる。「ひきプラ(ひきこもりプラットフォーム)」を運営する田島尊弘さん(40)だ。全国で開かれている当事者会の情報や、ひきこもりの人が参加できるボランティア情報を掲載している。
「ひきこもりの方の居場所の情報は、その会にホームページがなかったり、チラシなどの紙媒体にしか載っていないことも多い。情報にたどり着きにくいし、たどり着いても参加の方法もわからない。『もったいないな』と思ったのがきっかけです」
ひきプラが掲載している当事者会は、コロナ流行前は9割以上が対面で開催。緊急事態宣言後の5月末には、登録団体の半数以上がオンライン開催を始めたという。
田島さんは、オンライン開催は8050世代などにはハードルが高いことは認めつつ、そのメリットについてこう話す。
「地域の壁がなくなり、地元の会以外にも参加できます。電車に乗る、人混みに出る、顔を合わせるなどにハードルの高い人が多いので、その点でも参加しやすい。交通費もかからず、参加後も自由に入退室できます」
ひきこもりなどの当事者会を運営している任意団体の「うさぎプロジェクト」は、コロナ禍前からオンラインを積極的に活用している。代表のマイメロさん(30代)は、「対面で会うのが理想的ですが、オンラインには補助的な役割がある」としつつ、その強みをこう話す。