職を失った人もいる。神奈川県に住む女性(62)は、33歳の娘が中学時代の不登校がきっかけで、現在までひきこもり状態だ。娘は今年初めにパチンコ店での仕事を得たが、1カ月ほどで店がコロナ休業となり、失職。さらに、女性自身も緊急事態宣言の翌日、10年間続けてきたソフトウェア関係の職を失った。「コロナ禍の業績不振」を理由とした解雇だった。

「もう支えられません。20年後、『未来の8050』が心配です。私は年金で暮らせますが、娘はそれも心もとない」

 厚生労働省によると、コロナ禍での解雇や雇い止めは10月6日時点で約6万3千人。毎月1万人のペースで増え続けている。

「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」広報担当理事でジャーナリストの池上正樹さん(58)は、こう警鐘を鳴らす。

「リーマン・ショックのときをはるかに超える規模で『新たなひきこもり層』が顕在化してくる可能性があります」

■外とつながる機会喪失

 そんな不安の中、KHJには非正規で働く子どもを案じたり、不登校になった子どもを心配したりする20~40代の親が、「将来、8050にならないでしょうか」と先々まで心配して相談に来るケースもあるという。

 もう一つのコロナ禍による影響が、家族会などの「居場所」の喪失だ。徐々に再開するところも出てきているが、公的な施設が会場として使われることが多いため使用制限があり、外とつながる貴重な機会が途絶えることになった。

「たとえば図書館など、息抜きとして出かけていた先も閉じてしまった。ますます家にとどまらざるを得ない」(池上さん)

 出かけられないのは家族も同様だ。家の中でお互いに「逃げ場」がなくなってしまい、緊張関係が高まり、中には家庭内暴力などのトラブルになるケースもあるという。

 解決策の一つが、オンラインによる開催だ。9月、東京都内で12人ほどが参加して開かれた家族会。当事者の視点から不登校・ひきこもりなどの本人とその家族に支援を行ってきた「生きづらさインクルーシブデザイン工房」代表理事の大橋史信さん(40)はその席で、「いまはオンラインの家族会をやってみるチャンス。ぜひやってみて」と訴えた。

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