冷え症の人には、運動不足の人が多い。心拍数がしっかり上がる、きつめのウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的だという。入浴はぬるめの風呂に30分以上。風呂上がりのマッサージも効果的だ。
「体質改善だから、何カ月、何年と時間がかかります。でも、実行した人は半年後、1年後、何かしらの改善が見られます」(林医師)
冷えを改善することで、不眠が改善されたり、肩こりや腰痛、膝の痛みが治ったりといった効果を口にする患者も多くいるという。
「西洋医学的な視点からは説明できませんが、東洋医学では『冷えは万病の元』とされています。実際、冷えを改善することで体調が整い、直接関係のない症状が改善することは少なくありません」(同)
そもそも、病気ではない冷え症を、どうやって診断するのか。同院では体温と手先・足先の温度差を基準にしているという。
「冷え症外来に来る患者さんのなかには平熱が低い方も多いのですが、十分な問診をしたうえで、体温自体よりも末端との温度差を診ます」(同)
林医師によると、血液は「体温を運ぶ」役割を果たしている。なんらかの原因で末端の血管まで十分に血液が届かなくなり、冷えの症状が起きるのだという。つまり、規則正しい生活、栄養バランスのよい食事、適度な運動など、生活習慣を整えて血管を若く保つことも、立派な冷え症対策だ。また、漢方薬やビタミンEなどの錠剤も有効な場合がある。
患者のなかには、体温と手足の温度が、10度以上違う重度の冷え症の人もいる。冷え症自体は病気ではないが、重度の冷え症では背景に動脈硬化などの病気が隠れている場合もあり、治療が必要なこともある。
一方で、冷えを訴える人でも、体温と手足の温度差が、正常な人と同様、2、3度しかない人もいる。
「冷えには精神的な要因も大きく、『自分は冷えている』と思い込んでいるケースもあります。そんな方には、実際は冷えていないことや、冷え症は病気ではないことを伝えるだけでも安心しますが、本人が『冷えている』と思っていたらそれは冷え症。生活改善をすることで、自覚症状も和らいでいくケースが多いです」(同)
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2020年11月23日号より抜粋