肩こり、頭痛、不眠……こうした体調不良は、自律神経が乱れているサインかもしれない。対処法はさまざまだが、「あきらめる」ことで目に見えて改善することもあるという。ストレス時代を元気に生き延びるための心の使い方とは──。
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「ふっ切れ、あきらめたことで、不眠も解消され、ずっと感じていた疲れも残らなくなりました」
こう語るのは北海道函館市でIT関係の仕事をしているユウジさん(仮名・62歳)だ。
ユウジさんは5年前まで東京で教育関係の仕事に就いていた。そんな矢先、函館市で一人暮らしをする母親(89)が介護が必要な状態に陥り、ユウジさんは東京に残るか、仕事を辞めて母親の介護のため地元に戻るかの二択を迫られ、函館に移住することを決意。無職のまま母親の面倒を見ていたが、東京で働く元同僚らへの嫉妬や介護による疲労の蓄積で、次第に不眠や体調不良に悩まされるようになった。
これではまずい、と思ったユウジさんは、自らが置かれた環境を変えることを試みた。
母親と相談した上で実家から近い老人ホームに入ってもらい、週末や、平日の時間のあるときに会いに行くライフスタイルに変えた。自分の時間ができたことで、オンラインでも勤務可能なIT関連企業に就職し、働き始めた。
「いつか東京に戻って元の教育関係の仕事に復帰したい、と思いながらも実現できず、ストレスを感じていました。東京をあきらめて地元で生きることを選択したら、体調まで良くなってきたから不思議です。あんなにこだわっていた自分は何だったんだろうと」
ユウジさんのように、ずっとこだわっていた何かをあきらめたら、憑き物が落ちたように体が楽になった経験はないだろうか。
こうした現象が起きる背景には、人体のさまざまな機能をつかさどる自律神経の働きが影響しているという。自律神経研究の第一人者で多数の著作がある順天堂大学医学部の小林弘幸教授はこう語る。