「ほとんどの人は『あきらめる』というと、物事を途中で投げ出してやめてしまう、ギブアップするという悪い意味でとらえています。しかし、あきらめるは『明らめる』、つまり、今の自分に何ができて、何ができないかを明らかにすることも意味します。いわば、人生の断捨離。前に進むためには時に、『あきらめる勇気』を持つ必要があるのです。体調の面でも、多くの場合、あきらめた途端に自律神経のバランスが整います」

 自律神経は脳から血管、心臓や肺、腸などの内臓に伸びていて、呼吸や血液循環、消化吸収、体温の調節など、体のさまざまな機能をつかさどっている。脳と同じくらい重要な役割を担っているが、意識的に動かそうとしても、コントロールすることはできない。

 自律神経は、交感神経と副交感神経で構成されている。車に例えるとアクセルが交感神経で、ブレーキが副交感神経。交感神経が優位になると、血管が収縮して心身は緊張状態になり、副交感神経が優位になると、血管は弛緩して心身はリラックスする。どちらも生きていくために必要な機能で、交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、心身の不調につながる。

 水面下で私たちの生命を支えてくれているこの自律神経の働きに、人間の感情が密接にかかわっているという。

「近年、ネガティブな感情によって交感神経と副交感神経のバランスが乱されることがわかってきています。とくに『怒り』は交感神経を過剰に緊張させ、血管を収縮させる。血管が狭くなると血液がドロドロになりますし、ホルモンの調整機能にも悪影響を及ぼします。その結果、内臓の機能が低下したり、肌や髪もみずみずしさを失ったりと、さまざまな面で不調があらわれてきます」

 冒頭のユウジさんの例でも、介護疲れに加え、東京でバリバリ働き続ける同僚たちへの嫉妬というネガティブな感情が慢性的な不眠や体調不良につながっていたことが想像できる。東京での仕事復帰を「あきらめる」ことでそうした感情への執着から解放され、自律神経のバランスが改善、体調も良くなったというわけだ。

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