■加齢で劣化する自律神経の調節

 自律神経が乱れるリスクは、加齢とともに高くなるという。小林教授のグループの実験結果では、日本人の場合、男性は30歳、女性は40歳を過ぎたころから副交感神経の働きが急激に低下することがわかった。

「30代、40代といえば、働き盛りの年代。仕事でも家庭でも大きな責任を背負って頑張る時期です。しかし、人生の頑張りどころで、副交感神経の働きがガクッと下がり、自律神経のバランスが悪くなってしまうのです。交感神経というアクセルだけが過剰に機能してしまうので、冷静な判断ができなくなったり、感情の抑制がきかなくなったりする影響も出てきます」

 よく、「年をとると怒りっぽくなる」と言われるが、その背景には自律神経の変化があるのかもしれない。副交感神経の働きが低下すると、血管が収縮した状態が続くので、高血圧になり、脳疾患、心臓疾患を誘発するリスクも高まる。つまり、普段からブレーキ役の副交感神経の働きを意識的に上げることが、心身のバランスを整える最高の健康法なのだという。

 副交感神経の働きを高めるために有効な「あきらめ」。ただ、強い執着を断ち切るのはもちろん簡単なことではない。「わかっちゃいるけど、あきらめられない」という人はどうすればいいのか。小林教授は、こんなアドバイスをする。

「ストレスを抱えていると思ったら、思い当たる原因を10個書き出してみてください。それらを、ストレスの大きさで『小さい』『中くらい』『大きい』『とても大きい』と四つのランクに分けて表にしてみます。それを見つめてみると、『小さい』『中くらい』『大きい』に入るものは、『とても大きい』に比べると実はたいしたことではないことがわかって、消えてしまいます」

 この時点で、悩みのほとんどは消えてしまうことになる。残るは、「とても大きいストレス」。これにはどう対処すればいいのか。

「そのストレスを解消するための対処法を四つ考え、その一つひとつに『うまくいったとき』『うまくいかなかったとき』にどうなるかを書き出します。『うまくいかなかったとき』は、次の対応策を考えて、またそれが『うまくいったとき』と『うまくいかなかったとき』を考えます。これを4回ほど繰り返したら、『もし、これほどやってもうまくいかなかったら、そのときはもう仕方がない』と、あきらめる。自分の悩みをとことん突き詰めて明らかにすることで頭の中がクリアになり、次のステップへ踏み出すことができます」

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