「通常の医療保険や生命保険でもコロナは保障の対象になっています。会社員や公務員が感染により会社を休むと、健康保険から『傷病手当金』も支給されます。金額は、1カ月休んだとして月給の3分の2程度です」
国民健康保険では特例として国の財政支援による傷病手当金支給制度が用意されている。会社などに勤めていて国民健康保険に加入している人が対象で、自営業者や学生は含まれない。
■公費が下りない出費
これらの手当金があるにもかかわらず、“コロナ保険”が人気なのは、漠然とした不安感によるものが大きいようだ。ただ、完全に無用とも言い切れない。病院でかかるお金は公費負担だが、感染した場合の出費はそれだけではないからだ。
まず消毒代。家族がいる人は自宅内を隅々までアルコールスプレーなどで清める。平常時とは段違いに除菌ティッシュやうがい薬の使用量が増え、治った後もウイルス対策は引き続き徹底する人が多い。
入院して完治した場合も、すぐ自宅に戻らず“念のため”2週間ほどホテルなどで過ごすケースも珍しくない。子どもや高齢者が同居している場合には特にそうだ。こういった除菌グッズや“完治後の”ホテル滞在に対して公費は下りない。コロナ向け保険は治療費のためというより、自ら率先して行うコロナ後の対策に役立つのである。
最後に注意点を。「コロナにかかっていないが勤務先から解雇された」「自分は健康だが会社指示で自宅待機になり、その間の給与は減額」といった場合、雇用調整助成金で手当てされるケースを除き、ほぼすべての保険の対象外だ。就労不能に備える所得補償保険でも、健康なら保険金は下りない。そこは貯蓄でまかなうしかないのである。(ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2020年12月14日号