シャーペンの芯は硬いため、例えば解答用紙に穴があいたりした場合、反射が得られず、正しく読み取られない可能性がある。また、シャーペンは鉛筆に比べ芯が折れやすく、折れた芯が残ったり、こすれて答案が汚れたりすることも懸念される。

 大学入試センターが鉛筆の濃さを「H、F、HBに限る」と指定しているのは、「まずは塗りやすい芯の軟らかさを考慮して」だという。一方、2Bなど濃い鉛筆では、シャーペンの折れ芯同様、手などでこすれて解答用紙が汚れることもありうる。

「OMRで誤認識を招きかねない要素を極力省き、適正な読み取りができるようにするためです」(大学入試センター)

 共通テストは50万人以上が受験し、解答用紙の総数は300万枚を超える。OMRはこれらを1時間1万9千枚のペースで読み込む。さらに解答用紙は1度だけでなく、機械を変えて2度読む。2度の結果が合わない場合は、職員が目視で確認するが、例年、そうしたケースは「数千枚ある」という。

■私大でも鉛筆を指定

 一方、三菱鉛筆など「マークシート用鉛筆」を発売しているメーカーもある。一般的な鉛筆とは何が違うのか。前出の三菱鉛筆の奥村さんは言う。

「マークシートは細かい部分を連続して塗ります。このため、材料を均一な粒子にして特殊オイルを配合。軽い力で濃く書け、芯も減りにくくなっています」

 マークシート試験での鉛筆指定は共通テストに限らない。個別試験ではシャーペンと鉛筆の両方を認めているところが多いが、慶應義塾大学のようにマークシートには鉛筆を指定しているところもある。指定されている範囲内で、使いやすい筆記具を選び、受験生が本番で持てる力を存分に発揮することを願いたい。(編集部・石田かおる)

AERA 2021年1月11日号