大谷:日本人は、「こうでなければいけない」という理想がとても強い民族だと思っているんですね。それは、島国で小さな村社会で育ってきて、独特なことをすると村八分になってしまうという来歴による部分が大きいのかもしれません。

久道:「理想の歩き方」や「理想の靴」を一つに規定して、それに合わない環境にいたり、肉体的な能力が合っていない人を無理やりその中に当てはめなくてもいい。「型」というのもバランスで、全くないというのも困るけど、あまりにもそこにはめ込もうとするとおかしなことになってしまうと思っています。

大谷:私はこれまでに出会った先輩方から、大切なのは「その時その時に合わせたやり方を持つ」ことと教わってきました。例えば今までは職場に行くのが当たり前だったかもしれないけど、オンラインを使えば必ずしもその必要がないということになっていますよね。そういう意味で、コロナ禍は新しい時代に向けて今までの習慣を変えていくチャンスではないかとも僕は思っています。

久道:僕も同感です。今のような試練は、上手に生かすことができれば、ある意味ではすごくいいトレーニングになると思っています。

大谷:私と先生は日頃、お寺と病院という全く違う世界に生きています。ですが、コロナ禍の今だからこそ、こうやって出会うことができました。こういう異業種の方との出会いは、さらに自分を成長させてくれます。

 私は、「歩く」という言葉がものすごく好きで、自己流ですが、「歩く」というのは「生きる」と読むぐらい、その重要性を認識しています。しかし、今までそれを体系立てて考えることはありませんでした。先生のご本を通じて、「歩く」ということについてさらに学びを深めたいと思うようになりました。

(構成/本誌・松岡瑛理、編集協力/朝日新聞大阪本社 寺社文化財みらいセンター事務局長・平野圭祐)

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋