薬師寺 (c)朝日新聞社
薬師寺 (c)朝日新聞社
左から、久道勝也さん(下北沢病院提供)、大谷徹奘さん (c)朝日新聞社
左から、久道勝也さん(下北沢病院提供)、大谷徹奘さん (c)朝日新聞社

 感染者増に歯止めがかからず、収束の気配が見えない新型コロナウイルス。巣ごもりの毎日が続き、体だけではなく心のバランスを崩してしまう人は少なくない。「身心安楽」の秘訣を、世界遺産・薬師寺の執事長の大谷徹奘さんと足病医の久道勝也さんがオンラインで語り合った。

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大谷:17歳のとき薬師寺の高田好胤和上に誘われて僧侶になり、今年で41年目を迎えます。今、国民の誰しもが極度の緊張感を持ち、制限のかかった生活を余儀なくされています。コロナ禍というのはさながら「静かな戦争」だと感じます。

 師匠・高田和上は深い人間観察をされたお方で、「人間は追い込まれた時にその人の本性が出る」と説かれていました。私自身、危機的な状況に備えて修練する必要性を肝に銘じていたので、国内でコロナの感染が広がった時にも、あまり慌てはしませんでした。

久道:1月7日には1都3県で緊急事態宣言が発令され、13日にはさらに7府県が追加されました。現在の事態は、どうご覧になっていますか。

大谷:コロナの感染拡大はまだしばらく続いていくでしょう。一番大事なのは、「過去は戻ってこない」という自覚を持つこと。電車のダイヤ改定だと思ってください。私たちは目的地に行くための電車に乗らないといけません。例えば、今まで40分間で乗り継ぎが良い電車だったのが、これからは1時間かかる。だけどその20分間をどう使うのかを考える。同様に自粛の中で時間の使い方を見つめ直すチャンスが今なのではないかと感じます。

久道:おっしゃる通りで、コロナという状況は、それまで当たり前とされていたさまざまな価値観を見直すきっかけになったと思います。大谷さんはこれまで、全国を訪ね歩いて説法する日々を積み重ねてこられた。人間の生きるということについて考えながら歩くという、ある意味理想的な心と体の修練を積んでこられましたが、理想的な体と心の関係については今、どうお考えですか。

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