そして、じゅんやさんの動画は、短いギャグのような動画です。言葉を必要としない、シンプルな動画です。彼の動画を観て、「クオリティーが低い」と思う人もいるかもしれません。しかしながら私は、じゅんやさんの動画は非常にクオリティーが高いと感じています。YouTubeにおいての「質の高い動画」は再生される動画だからです。感動した、お金がかかってる、手間がかかってる、綺麗な映像……という要素は、動画の質とは関係ありません。どんなに美しい映像でも、再生されなければYouTubeにおいてはクオリティーが低いと考えられるのです。そもそも、冷静に考えれば、1日に2000万回も再生される動画たちの質が低いわけがないのです。視聴者が求めていることが答えで、ニーズを満たしていれば質が高いと判断できるのです。じゅんやさんの動画は、視聴している国内外の人々にとって面白いから再生されています。再生回数や登録者数の数字が、クオリティーの証明です。YouTubeに限らず、あらゆる商品やサービスで「質」の部分を勘違いしている人は非常に多いと思います。
例えば、ある住宅メーカーは天然の木材をふんだんに使った住宅を勧めました。無垢(表面に塗装を施さない)の天然木で、職人がこだわって仕上げた高級床で、「木の温かみ」を感じることができると営業されました。しかしながら私には子供が2人いて、毎日食べ物やジュースをこぼします。小さい子は、お菓子を触った油っぽい手で部屋中をベタベタ触るし、オムツもまだ外れていないし、おもちゃ遊びでモノもよく落とします。合板のフローリングの方が傷も汚れもつきにくく、掃除もしやすく、安価なので張り替えられます。子持ちのママには、職人や天然木のこだわりは、多くの価値を提供しません。高価な無垢材よりもフローリングの方が「ニーズに合っている」ため、「質が高い」といえます。同様の捉え方をすれば、夜景の見えるレストランのフルコースよりも、すぐに料理がでてきて、プラスチックの食器があるファミリーレストランの方が質が高い場合もあるのです。このように、商品やサービスの「質」は、相対的なもので、ユーザーによって変わります。
人気の漫画やアニメ、売れているサービスや商品、再生されている動画について、「クオリティーが低い」と判断する人もいますが、その人が想定されているユーザー層から外れていることが原因です。自分にとっては「つまらない」ものでも、そのユーザーや視聴者にとっては「素晴らしい」ものです。「質」とは相対的なものだからです。そして、基本的に売り上げや再生回数などの数字が伴っているなら、クオリティーが低いはずがありません。「好き」と「数字」には差があること、「好き」は人それぞれであり、それぞれの人にとっての「質」があります。YouTubeに限らず、商品やサービスを俯瞰的に見るときに、この考え方は非常に重要です。