東京を離れた中1生たちに聞くと、みな生活に慣れ、「大人」へと成長しているようだ。

「最初のころはホームシックになってしまいましたが、いまは友だちがたくさんできましたし、すっかり慣れました。寄宿舎に慣れるにしたがって、周囲から『何だか穏やかな性格になったね』と言われるようになりました」(東京都渋谷区出身、中1生)

「最初は家が恋しいと思いましたが、いまは逆に寄宿舎を離れる金曜日が寂しくて仕方ありません」(東京都港区出身、中1生)

「たとえば、起きたら布団を自らたたむ……そんな行動を率先してやれるように変わりました。親からびっくりされています(笑)」(東京都目黒区出身、中1生)

■寄宿生活を支える「エンジェル制度」

 同校の母体である「聖心会」が裾野の地に修道院を創立したのは1952年のこと。

 この修道院にはかつてシスターの修練院(養成所)があり、新人のシスターひとりひとりに対して、支え教える役割を担う先輩のシスター(エンジェル)がついたという。

 不二聖心女子学院はこの制度を受け継ぎ、寄宿生のみならず、通学生にも導入した。1人の高3生(エンジェル)が、1~2人の中1生(チャイルド)のお世話をする。中1生は尊敬の念を込めて世話係の高3生を「エンジェルさん」、高3生は世話をする中1生を愛情いっぱいに「チャイ」と呼んでいる。

 寄宿生活を送る東京都品川区出身の高3生・Tさんは目を細める。

「もう、わたしのチャイは可愛くて仕方がありません。彼女たちが寄宿生活をうまく送れるために手を尽くしたいと思います。あとは、ちょっとした人間関係のトラブル。チャイが悩んでいるときは、こちらが手取り足取り教えるのではなく、自ら考えてくれるように導きたい」

「エンジェル」として後輩に温かな目を向けることも、同校が仕掛けた教育のひとつなのだ。

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